大統領を罷免されたルセフ氏
ブラジルの上院議会は8月31日、政府会計を不正操作した背任罪で職務停止となったルセフ大統領の弾劾裁判を採決し、有罪61、無罪20の賛成多数でルセフ氏の罷免が決まった。ロイターなどが報じた。
ルセフ氏の罷免に伴い、ミシェル・テメル副大統領が大統領に昇格する。任期は、ルセフ氏の残り任期となる2018年末まで。弾劾裁判で大統領が罷免されたのはブラジル史上初めて。1992年に当時のコロル大統領も汚職疑惑で弾劾裁判にかけられたが、採決の直前に辞任している。
大統領に昇格したテメル氏
ルセフ氏は公邸で会見し、「テメル氏らはクーデターで権力を手にした。私は何の不正もしていない」と述べた。一方テメル氏は「国民のために公共の利益を促進する」と宣誓した。
BBCによると、ルセフ氏は軍事政権時代に左翼ゲリラとして活動し、国家反逆罪で3年間投獄されたのを経て、82年に政界入りし、リオグランデ・ド・スル州のエネルギー通信相を務めた。2001年には左派・労働党のルラ大統領政権で鉱業エネルギー相、官房長官を歴任した。2010年ルラ大統領の後継者として大統領選に出馬し、決選投票でセラ元サンパウロ州知事を下して当選。2011年1月、ブラジル史上初の女性大統領に就任した。
しかし、ルセフ氏が取締役を務めていた国営石油企業ペトロブラスの汚職疑惑で、ルラ元大統領らが訴追された上、2015年の経済成長率がマイナスとなるなど経済の低迷し、支持率が急落。ルセフ大統領も、社会保障費を捻出するために財政赤字の会計を不正操作した背任罪に問われ、5月12日に 弾劾裁判の開始が可決され、180日間の職務停止処分となった。
大統領に昇格するテメル氏は、中道右派の最大政党ブラジル民主運動党(PMDB)の党首。レバノン移民2世で、下院議長を3回務め、過去20年の大統領と協力して連立政権に加わるなど政治経験は豊富だが、ルセフ政権の支持が低下すると連立政権を離脱し、後継の大統領を狙っていた。しかし、世論調査で「大統領にふさわしい人物」として支持したのはわずか2%程度で、国営石油企業ペトロブラスの汚職疑惑でも名前が浮上している。ルセフ氏の職務停止に伴い大統領代行に就任したが、暫定政権の閣僚23人全員が白人男性で、女性や黒人が1人もいなかったことから批判を浴びた。
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