北朝鮮の朝鮮労働党の資金を管理していたヨーロッパの北朝鮮駐在員が2016年6月、巨額の「秘密資金」を持って姿を消したと報道された。
8月19日の東亜日報によると、ヨーロッパの対北朝鮮消息筋は18日、「朝鮮労働党39号室大聖(テソン)指導局ヨーロッパ支局の総責任者、キム・ミョンチョル氏(仮名)がヨーロッパのある国で、2人の息子とともに6月に姿を消し、極秘裏に現地当局の保護を受けている」として「キム氏が管理していた資金は、ユーロやポンド、ドルなどをすべて合わせて約4000億ウォン(約360億円)に達するとみられており、すべて持ち出したと聞いている」と明らかにした。
※訳注:「39号室」は、故・金正日総書記の権力基盤を固めるために創設された朝鮮労働党の機関。金ファミリーの統治資金のため、国内鉱山の管理や独自の輸出入を通じた外貨稼ぎなどを手がけていると言われる。
17日、韓国への入国が公表されたテ・ヨンホ駐イギリス北朝鮮大使館公使の亡命も、この事件と無関係でないとみられている。テ・ヨンホ公使もこの件で責任を負う立場だからだ。事実であれば、本国召還後に処罰されるのを避けるため、家族と一緒に亡命を選択した可能性がある。
テ・ヨンホ公使
テ・ヨンホ公使も、北朝鮮の金正恩・国務委員長の統治資金を持って出てきたという報道もある。8月19日の韓国日報によると、北朝鮮の事情をよく知る消息筋は18日、「テ・ヨンホ公使が駐イギリス北朝鮮大使館で宣伝業務だけでなく、財務まで担当していた」「大使館が管理していた580万ドル(約5億8100万円)の巨額資金を持って脱北したと聞いている」と述べた。
北朝鮮駐在員の「脱北」ラッシュが続いている。8月19日の中央日報は「2016年に韓国に入国した北朝鮮の外交官は、テ・ヨンホ公使のほか、少なくとも6人いると、政府幹部が語った」として「以前とは異なり、韓流などに触れ、家族とのより良い暮らしを求める『移民型脱北』が増えている」と、統一省関係者の話を伝えた。統治資金を北朝鮮に送金しなければならない圧力を本国から受ける立場で、本国に召還される負担などを感じて亡命を申請していると思われる。
無一文で韓国などに亡命した場合、金銭的な困難に陥るしかないという事情もある。最近、医師出身の脱北者が、韓国で定職につけず肉体労働者となり、8月13日にビルの窓ふきの最中に転落死する事故が発生した。しかし、2015年11月9日の週刊東亜は、第三国で資金洗浄を担当し、統治資金を持ち逃げして韓国に来た脱北者A氏が、高級住宅街で知られるソウル・江南(カンナム)のマンションに住み、贅沢な暮らしをしていると伝えている。
A氏の韓国生活が通常の脱北者と異なる最大の理由は、彼が持ち込んだ莫大な資金のためだ。韓国に来た後、関係機関の合同尋問を受けて約2カ月、情報機関の施設に滞在したA氏は、脱北者の定着支援施設「ハナ園」を経由せずに、すぐにソウル暮らしを開始した。高価な外車を購入するなど、江南の富裕層のライフスタイルになった。長い間、外国で暮らしてきたA氏と家族にとって、ソウルでの暮らしは特に目新しいことや不便なことはなかった。正確な額は本人のみぞ知るところだが、脱北者の社会では、彼が持ち込んだ資金の額は500万ドル(約56億7000万ウォン)前後と言われている。(週刊東亜、2015年11月9日)
北朝鮮は公式に言及していないが、かなり不快に感じているとみられている。金正恩・国務委員長が、脱北を防げなかった責任者を高射砲で即時に処刑したという報道もある。
また、このような脱北の動きを、韓国情報当局の「工作」と片付けることもある。8月18日のイギリス・テレグラフ紙によると、北朝鮮の「非公式スポークスマン」と呼ばれる日本の朝米平和センターのキム・ミョンチョル所長は「賄賂や脅迫による脱北」という主張を展開した。
「韓国情報機関の典型的な仕業であり、北朝鮮を崩壊させようとする陰謀の一部だ。全世界の北朝鮮の外交官を金や女性で誘惑しようとしている。また、子供たちを誘拐した後に、外交官が韓国に行くと同意するまで人質にとることもある」
このように統治資金を持って亡命した場合、北朝鮮は資金不足に苦しむ可能性が高い。北朝鮮が統治資金不足のため、黄海と日本海(東海)の北方限界線(NLL)付近の操業権を中国に売却したこともあったからだ。
ハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳しました。