アメリカ有力紙「ワシントン・ポスト」(8月15日付)は、オバマ大統領が導入の是非を検討している核兵器の先制不使用政策について、安倍晋三首相がハリス太平洋軍司令官に反対の意向を伝えていたと報じた。
「核兵器のない世界」の実現を訴えるオバマ政権は現在、核兵器の先制不使用宣言を含む核政策の大幅な変更を検討している。核実験の全面禁止や核兵器予算削減など複数の政策案を検討中とされ、核実験を禁止する国連安保理決議を採択する構想もあるという。
同紙は複数の米政府高官の話として、ハリス司令官と会談した際、安倍首相はアメリカが先制不使用を宣言すれば、北朝鮮などに対する抑止力が損なわれ、紛争のリスクが高まると伝えたという。外務省によると、首相は7月26日、首相官邸でハリス司令官と約25分間会談しており、この席で表明したとみられる。
日本政府は、日本の安全保障の根幹は日米安保条約であり、核抑止力を含む拡大抑止力(核の傘)に依存しているとの考えを米国に重ねて伝えている。先制不使用政策が導入されれば、「核の傘」にほころびが出ると懸念する声がある。
(安倍首相:核先制不使用、米司令官に反対伝える 米紙報道 - 毎日新聞より 2016/08/16)
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、日本の他に韓国やフランス、イギリスなどの同盟国が、核兵器の先制不使用政策について懸念を表明した他、カーター国防長官やケリー国務長官、専門家からも反対の声が出ているという。
■核兵器の先制不使用
「核兵器の先制不使用」とは、相手方の核攻撃に対する反撃の場合を除き、核兵器を使用しないという核保有国の政策。通常戦力、化学・生物兵器による攻撃に核兵器では応酬しないことで、核兵器の役割を核対核に限定することが目的としている。
5月27日、被爆地・広島を訪問したオバマ大統領と安倍首相
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