もしあなたが2年前にバケツに入った氷水を頭からかぶっていたなら、このニュースを聞いてまた鳥肌が立つだろう。
急速に広まったアイス・バケツ・チャレンジで集まった資金は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する、新たな遺伝子の発見に役立った。ALS協会によれば、NEK1遺伝子は、プロジェクトMinEによって特定された。この遺伝子の研究は、会話、食事、運動、呼吸の能力を体から奪うALSの治療法の開発につながると期待されている。
プロジェクトMinEの発見は、数々の寄付金によって実現したが、その中にはアイス・バケツ・チャレンジで集まった寄付金も含まれている。
「SNSで拡散したことで資金が集まり、研究を支える鍵となった」と、プロジェクトMinEの創設を支援したALS患者のバーナード・ミュラー氏は自らの声明で述べた。
かつての大学野球選手で、ALS患者のピート・フレーツさんの呼びかけで、アイス・バケツ・チャレンジは2014年夏に急速に広まった。このチャレンジは、ALS研究へ人々の関心と資金を集めるために、世界中の人々がバケツに入った氷水を頭からかぶり、その様子をSNSでシェアしていった。
キャンペーンは大きな反響を予備、オプラ・ウィンフリーからビル・ゲイツまで、数多くのセレブたちも参加した。
アイス・バケツ・チャレンジはわずか数週間で8850万ドル(約90億円)の寄付金を集め、ALS協会はプロジェクトMinEを含む複数の研究プロジェクトへの資金提供を可能にした。
「世界の科学者による協力が、ALSのアイス・バケツ・チャレンジによる寄付金によって実現され、このような重要な発見につながりました」と、およそ80人の研究者が参加したプロジェクトMinEの主任ジョン・ランダース氏は声明で述べた。「ALSの原因究明のために全力を尽くした、大勢の人々の思いが実を結んだ最高の例です」
アイス・バケツ・チャレンジからの支援金に加え、プロジェクトMinEはALS協会のジョージア支部、グレーター・ニューヨーク支部、アムステルダム・シティ・スイムなどからも寄付金の提供があった。
ALS協会によると、アメリカには約2万人の患者がおり、毎日15件の例が新たに見つかっている。治療法は、未だ見つかっていない。
プロジェクトMinEの調査は、家族性、遺伝性のALS研究で過去最大規模のものであるという。
2015年3月にサイエンス誌に掲載された研究論文で、研究者らはすでにNEK1遺伝子とALSの遺伝的関係性を指摘してきた。しかし、病気に対する遺伝子の関係性を裏付ける研究が求められていたが、新たな研究でそれが実現している、とハーバードメディカルスクールの細胞生物学者ウェイド・ハーパー氏は言う。ハーパー氏の研究室は、2015年の論文に携わった研究者のグループに所属していた。ハーパー氏は、新たな論文は、元のNEK1についての研究結果を「適切に」参照している、と述べた。
ミュラー氏がプロジェクトMinEを立ち上げようと思ったきっかけは、オランダのALS研究センターを視察し、何千ものDNAサンプルが資金不足のため未使用のままになっていたのを見たことだ。
2014年のALS協会の寄付で、プロジェクトMinEはアメリカに調査部門を設置することができ、マサチューセッツ大学のランダース氏が主任となって研究が行われた。
新たに発見されたNEK1遺伝子は、病気に関与する最も一般的な遺伝子の上位に位置付けられ、治療法開発の新たな目標となっている。
CNNによると、NEK1遺伝子は、大規模な資金調達運動を通して得られた寄付金を利用して発見された、ALSに関連する遺伝子のうち3例目になる。
「NEK1遺伝子の発見は、信じられないほど嬉しいです」と、ミュラー氏は述べた。「地球上からこの病気を撲滅させるという、我々の最終的な目標にまた一足近づいています」
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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