オーストラリアのリザード島近くで起きているサンゴの白化を捉えた2016年3月の写真。
「地球最大の生命体」と言われ、最も複雑な自然の生態系を持つオーストラリアのグレート・バリア・リーフにとって、2016年は悲惨な年になっている。
グレート・バリア・リーフは史上最悪の白化(水温が上がり、サンゴから褐虫藻が抜けだしてサンゴが白くなる現象)被害を受けており、90%を超えるサンゴ礁が影響を受け、3分の1以上が死滅した。2016年初め、このサンゴ礁の一部が完全に破壊されている衝撃的な写真と動画が公開された。
現在、グレート・バリア・リーフ一帯は「完全な生態系の崩壊」に苦しんでいる。そう語ったのは、グレート・バリア・リーフ北部のリザード島近郊で1週間の調査を指揮した海洋学者、ジャスティン・マーシャル氏だ。
「最も衝撃的なのは、魚の減少です」と、マーシャル氏はガーディアン紙に語った。「おおまかに言うと、[白化の前と比較して]50%も減少しています。完全に姿を消していた種もいくつかありました」
以前はグレート・バリア・リーフでよく見かけられたミスジリュウキュウスズメダイやデバスズメダイといった魚はほぼ「完全に」消えてしまったとマーシャル氏は述べた。
#GreatBarrierReef(グレート・バリア・リーフ)の一部で見られた「完全な生態系の崩壊」
気候変動に強力なエルニーニョ現象が加わって進行している大規模な白化は、グレート・バリア・リーフだけでなく世界中すべての主要なサンゴ礁に影響を与えた。ガーディアン紙によると、今回のサンゴ礁の白化は観測史上最も広範囲にわたるものだという。
オーストラリア国立サンゴ白化対策本部を率いるテリー・ヒューズ教授は5月、「地球温暖化によってグレート・バリア・リーフが大規模な白化を経験するのはこの18年間でこれが3回目です」と述べた。
現在の白化は「我々が以前観測したものよりはるかに進行している」と、ヒューズ教授は述べた。
リザード島、グレートバリアリーフのサンゴ礁の白化。
リザード島周辺の枝サンゴの90%が死滅したと見られている。それほどまでに生態系が悪化した同地域のサンゴ礁の回復には困難が伴う。
オーストラリアはすでにグレート・バリア・リーフの白化危機に対処すると宣言している。6月、オーストラリアのマルコム・ターンブル首相は6月、グレート・バリア・リーフの清掃と保存に10億豪ドル(約791億円)を支出すると公約した。グレッグ・ハント環境相は「サンゴ礁の衛生に対する取り組みとしては、オーストラリア史上最大の規模となる」と述べた。
「子どもたち、その子どもたち、これからの世代に貴重な遺産を残すための投資なのです」と、ハント環境相は語った。
しかし、野党や環境活動家は政府の動きを偽善だと批判した。2015年、ハント環境相はレート・バリア・リーフの近くにある同国最大の炭鉱開発を承認しているからだ。
「サンゴ礁が炭鉱開発で受ける被害から注意をそらそうとする、ターンブル政権の卑怯な手段だ」と、野党オーストラリア緑の党のラリッサ・ウォーターズ副党首はそう語った。
グレート・バリア・リーフのサンゴの白化を捉えた動画と写真
2900のサンゴ礁群と1500種以上の魚が生息する広大なグレート・バリア・リーフには長い歴史がある。2000万年前から存在するとみられており、イギリスとオランダ、スイスの国土を合わせたよりも大きい。その巨大さのため、宇宙からも視認できる。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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