中国・広州のショッピングモール「正佳広場」内にある動物園「極地海洋世界」の内部を捉えた映像と写真は、悲惨そのものだ。クマ、オオカミ、シロイルカやセイウチなどの動物たちが、薄暗い囲いの中に閉じ込められ、人々は周囲で大騒ぎして写真を撮ったり、時には大きな音でガラスを叩き、動物たちの興味を引こうとする。
「あるクマは落ち着かない様子で狭い囲いの中を行ったり来たりしている。専門家の話では、こうした行動はストレスや心理的な問題を抱えているときに表れるという。オオカミたちは小さな一室に力なく横たわり、セイウチは子供を産み、シロイルカたちは閉ざされた空間を往復しながら泳いでいる」と、2016年初めにワシントンポストはレポートしている。
ここは、「世界で最も悲惨な動物園」と呼ばれる。また、「動物たちの牢獄」とも言われている。
香港の動物慈善団体アニマルズ・アジアが撮影した動画には、動物園でホッキョクグマとヒグマの雑種と見られる一頭のクマが囲いの床の上でぐったりと横になっている様子が見られた。同団体によると、そのクマは「自撮り(セルフィー)に苦しんでいる」という。
「中国のショッピングセンターの真ん中で捕らわれ、あまり好きではない展示場所の不自然な青色とコントラストになる白い毛皮を持つ、このかわいそうなホッキョクグマには逃げ場がない」とアニマルズ・アジアは記述した。「写真を撮ったり、窓を叩いたり大声を出す人から身を隠す場所がどこにもない。自然のものが何もなく、クマが必要とするものを満たす環境は作られていない。誰もこの巨大な動物を気にかけていない」
「動物たちを自然環境から連れてくるのを妨害するべきではないが、動物たちが新たに暮らす場所が、極地海洋世界で目にするような環境なら、それは最悪の状況と言える」とアニマルズ・アジアは言う。「私たちはみな、このような施設に抗議しなければならない」
アニマルズ・アジアによると、社会的な非難の嵐は施設側に衝撃を与えたという。しかし施設は運営を続けている。
「動物好きな人たちは施設をボイコットするかもしれませんが、問題をあまり分かっていない人たちは利用します。経済的にはまったく痛手になりません」と、慈善団体の動物愛護担当ディレクターのデイヴ・ニール氏は言う。
それでもニール氏は、世論の圧力によってこの問題に大きな変化をもたらすことができると強調した。施設の経営者は「世界中から怒りを買い、心底ショックを受けた」と言い、またアニマルズ・アジアに対して動物たちの世話をするよりよい方法を教えて欲しいと語った。
「このようなひどい環境でホッキョクグマを住まわせるような人たちと連携するのは難しいことですが、彼らはとても素直でした」と、ニール氏は記述した。また施設側が、雑種のホッキョクグマ2頭のために雪山を作るなど団体が推奨した方法のいくつかをすでに実行していることを付け加えた。
ニール氏は、動物園が近いうちに閉館することはなさそうだが、圧力を続けることで「目立った変化」に繋がるのではないかと期待している。
「間違いなく、こんな風に動物たちを飼育するのは受け入れがたいことです。私たちは今後も協力を続け、改善するよう要求を続けます」と彼は語った。「私たちの経験から学べることがあるとしたら、まず最初にドアを開け、それからケージを開けることです」
極地海洋世界は、中国最大のマリンパークの運営会社ハイチャン・ホールディングスが運営している。ハフポストUS版はこの企業にコメントを求めたが回答はなかった。
2016年初め、極地海洋世界の経営者は地元メディアに対して、施設は適切な居住スペースを動物たちに与えており、施設の目的は「科学の普及と海洋生物の飼育」であると語った。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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