アメリカ大統領選挙の候補者を指名する共和党全国大会で7月18日、候補指名を確実にしている実業家のドナルド・トランプ氏のメラニア夫人が行った演説が、2008年のミシェル・オバマ大統領夫人のスピーチに酷似しているという疑惑が浮上している。
7月18日月曜の晩はトランプ夫人が国民を前に初めて本格的なスピーチをした日となったが、そこでメラニア氏は、オバマ大統領夫人のミシェル氏が2008年の民主党全国大会で語った言葉を数多く盗用したようだ。盗用された部分を太字で示したが、そこでメラニア氏は勤勉と誠実の重要性について語っている。
メラニア氏は18日夜、クリーブランドに集まった多くの共和党員や報道関係者に向かって、こう語りかけた。
“From a young age, my parents impressed on me the values that you work hard for what you want in life; that your word is your bond and you do what you say and keep your promise; that you treat people with respect,”
「両親は私に、子供の頃から、人生に望むものを手に入れるために一生懸命に働くことの尊さを教えてくれました。また、自分の言葉は自分に跳ね返ってくるのだから、言ったことは必ずやり遂げ、約束は守ること、そして人には敬意を持って接することを教え込まれたのです」
2008年のミシェル・オバマ夫人のスピーチ。
“You work hard for what you want in life; that your word is your bond and you do what you say you’re going to do; that you treat people with dignity and respect, even if you don’t know them, and even if you don’t agree with them.”
「人生に望むものを手に入れるため、一生懸命に働きましょう。自分の言葉は自分に跳ね返ってくるのだから、やると言ったことは必ずやり遂げましょう。たとえ見知らぬ人でも、また意見の食い違う人であっても、相手の尊厳を認め、敬意を持って接しましょう」
メラニア氏は、子供たちについて語る場面でもミシェル氏の言葉をそのまま使った。
“We want our children in this nation to know that the only limit to your achievements is the strength of your dreams and your willingness to work for them.”
「この国の子供たちには、夢に向かう強い思い、何としても夢を実現するという強い意志の他に、前途を遮るものは何もないことを知ってほしいのです」
2008年のミシェル・オバマ夫人のスピーチ。
“We want our children — and all children in this nation — to know that the only limit to the height of your achievements is the reach of your dreams and your willingness to work for them.”
「夫と私は子供たちに、そしてこの国のすべての子供たちに、夢に向かう強い思い、何としても夢を実現するという強い意志の他に、前途を遮るものなど何もないと知ってほしいのです」
ハフポストUS版はこうした盗用についてトランプ陣営に問い合わせたが、広報担当者からの回答はなかった。共和党の報道官は、共和党全国委員会(RNC)はこの問題に答えるつもりはないと語った。
■ トランプ氏はミシェル氏のスピーチを褒めていた
メラニア・トランプ氏はスロベニア生まれ。英語をはじめ何か国語も話すことができる。18日夜のゴールデンタイムに行われたスピーチは、2016年共和党全国大会の初日のハイライトだった。
トランプ夫妻が2008年のミシェル・オバマ氏のスピーチをその場で聞いていたかどうかは定かではないが、ドナルド・トランプ氏がミシェル氏の2012年のスピーチを褒めていたことは間違いない。
@MichelleObamaのスピーチは、大きな重圧の中、とてもよかった。民主党も大満足だろう!
このあからさまな盗用を最初に指摘したのは、ジャーナリストでインテリア・デザイナーのジャレット・ヒル氏のTwitterだった。
スピーチ原稿のどの部分がメラニア氏自身の言葉なのかは分からないが、当日の朝、メラニア氏はNBCのキャスター、マット・ラウアー氏にこう語っている。「原稿は一回、ざっと読み返しました。それだけです。できる限り人に任せず自分で書いた文章ですから」
盗用疑惑は大きな波紋を呼んでいるが、ニュースではトランプ支持者からの弁護の声はほとんど聞かれない。CNNのトランプ支持者の一人ジェフリー・ロード氏は、この盗用の責任が誰にあるにせよ、ささいな問題だという。「そんなことは問題ではありません。これはベンガジ疑惑とは違うのです」
これってかなりあからさまじゃないか?
トランプ陣営で広報顧問を務めるジェイソン・ミラー氏は19日朝、メラニア氏がミシェル氏のスピーチから「言葉の断片」を借りて使ったことを認め、「原稿作成チーム」の存在を示唆した。しかしこれは、原稿を自分で書いたというメラニア夫人の発言を否定するものだ。
「すばらしいスピーチを作り上げるため、原稿作成チームは、メラニアに子供の頃からの示唆に富んだ思い出を聞いてはメモを取りました。そうして集めた彼女の人となりがわかるような出来事の中に、あの言葉の断片もあったのです」とミラーは声明文で語った。「スピーチを通して、メラニアの移民としての実体験とアメリカに対する愛が輝きを放っており、それが決め手となってスピーチが成功したのです」
■ トランプ氏の選対責任者は、なぜかヒラリー・クリントン氏に責任転嫁
トランプ陣営の選対責任者ポール・マナフォート氏は19日、盗用疑惑の責任を民主党で大統領候補指名を確実にしているヒラリー・クリントン氏の支持者たちに責任を転嫁しようとした。
「ミシェル夫人のスピーチを盗用したものではない」と、マナフォート氏はCNNのニュース番組「ニューデイ」で語った。「これらの言葉はよく使われる一般的な言葉だし、メラニアが自分の家族とかそういったものを大切にする意味を言い表したものだ」
「というか、彼女は昨晩3500万人を前にスピーチしたんですよ」と、マナフォート氏は言った。「彼女はわかっていますよ。ミシェル・オバマ夫人の言葉をパクろうなんて考えるのはとんでもないことだって」
「というかこれは、ヒラリー・クリントンがいかにして、自分を脅かしそうな存在になった女性を貶め、こき下ろそうとするかという、またとない例なんです」と、マナフォート氏は言った。「そうはいきませんよ」
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
関連記事