7月10日投開票の参院選の結果、戦後初めて、改憲勢力が衆参両院で3分の2以上を占めた。
保守系団体「日本会議」は、全国の地方議会に憲法改正決議案の議決を求めるなど、改憲運動を繰り広げてきた。この団体を支援する議員連盟「日本会議国会議員懇談会」には、現職国会議員の4割が参加していると言われる。その動員力の高さや正確さという「魅力こそが、政治家たちを『改憲』に向かわせる原動力」と、菅野完氏は『日本会議の研究』(扶桑社新書)の中で分析している。
日本会議会長の田久保忠衛・杏林大名誉教授は7月13日、日本外国特派員協会で記者会見し、改憲について「絶好のチャンスを迎えた。私が安倍(晋三首相)さんなら、任期内に全力を挙げて実現したい」「日本会議としては、これからいろいろな運動を検討して乗り出していくんだと思います」と、改憲運動を加速させたいとの希望を述べた。
一方で「同じ自民党の中でも憲法改正に慎重な人も、積極的な人もいる。自民党の中でも一本にまとめるのは相当難しい。まして野党を見ていると、憲法9条(改正)に反対と明確に申す人もいるので、日本全体がどう動いていくのか。国際情勢も大きな要因になる」と、実現は容易でないとの見方も示した。
日本会議は憲法9条を改正して自衛隊を国軍とすること、「家族の保護」規定を設けること、緊急時に憲法を停止する「緊急事態条項」を盛り込むことを求めている。田久保氏は、国際情勢の変化を理由に、改憲で日本の軍事的な存在感を国際的に高めたいとの狙いを明言した。
「おそらく10年後には憲法は改正される。北東アジアの一角に普通の国が出現する。我々は軍隊をつくるけども、シビリアンコントロールを定めて関係国に心配を起こさせない。優しい国、治安はしっかりする、平和を愛する国という印象を残していく『道義国家』が目的だ」
「中国の膨張主義とアメリカの内向きの間に立って、日本はどうしなければいけないか。戦前の軍隊を復活するなんて、おどろおどろしいことを言わないで欲しい。自衛隊のシステムを普通の国のような軍隊にして憲法に盛り込む。護憲派の言い分は中国の言っていることと極めて似ている」
日本の皇室の歴史を語り始めると、身ぶりを交えながら逐次通訳が止めるのも聞かずに語り続ける田久保氏だったが、日本会議の個別の運動方針を尋ねられると「日本会議の具体的にどういう施策をしているか、お恥ずかしながら掌握していない。子供の体罰…どうしろと言ってるんでしょうか」と、質問した記者に聞き返す場面も見られた。
会場には『日本会議とは何か』の著者、菅野完氏も姿を見せた。