テリーザ・メイ氏、どんな人? イギリスの新首相のあだ名は「氷の女王」

「有能で、タフで、鋭い」との定評。「趣味は料理」という一面も。
British Home Secretary and leadership candidate for Britain's ruling Conservative Party Theresa May arrives for a cabinet meeting at 10 Downing Street in London, Tuesday, July 5, 2016. British Prime Minister David Cameron resigned on June 24 after Britain voted to leave the European Union in a referendum. (AP Photo/Matt Dunham)
British Home Secretary and leadership candidate for Britain's ruling Conservative Party Theresa May arrives for a cabinet meeting at 10 Downing Street in London, Tuesday, July 5, 2016. British Prime Minister David Cameron resigned on June 24 after Britain voted to leave the European Union in a referendum. (AP Photo/Matt Dunham)
ASSOCIATED PRESS

イギリスのキャメロン首相の辞任に伴い、7月13日(日本時間7月14日)、保守党のテリーザ・メイ氏がエリザベス女王から首相に任命された。これにより、故マーガレット・サッチャー氏以来、同国史上2人目の女性首相が誕生した。

エリザベス女王に謁見するテリーザ・メイ新首相

EU離脱が決まった国民投票で混迷するイギリスだが、その舵取りを任されるテリーザ・メイ氏とは、一体どんな人物なのだろうか。

■夫フィリップ氏が「心の支え」

テレグラフなどによると、メイ氏は1956年生まれの59歳。イングランド南部イーストボーンで、イギリス国教会の牧師の一人娘として生まれた。教区の信者を助ける父の影響で政治家を志したのは12歳の時だったという。

その後、公立学校(グラマースクール)を経て、名門オックスフォード大学へ進学。地理学を学んだ。将来の夫フィリップ氏と出会ったのもこの頃だ。イスラム圏初の女性首相で、その後暗殺されたパキスタンのブット氏の紹介で知り合い、1980年に結婚。交通事故で父親を亡くし、その数ヶ月後には多発性硬化症で母親も死去するなど、愛する人を立て続けに失ったメイ氏はフィリップ氏を「心の支え」と語ったという。

テレーザ・メイ氏にキスする、夫のフィリップ・メイ氏

大学卒業後はイングランド銀行など金融業界で活躍。1997年には3度目の挑戦で下院議員に初当選し、国政へ進出。有能かつ、タフで鋭いと定評のあるメイ氏は保守党内で頭角を表し、野党時代には党の要職や「影の内閣」で閣僚を歴任した。こうした実績から、党内でも首相候補と言われてきた。

■あだ名は「氷の女王(the Ice Queen)」

故サッチャー氏(左)とメイ氏

故サッチャー元首相が妥協を許さない政治姿勢から「鉄の女」と呼ばれたのに対し、自分の考えを表に出さず政治家同士で馴れ合うことを良しとしないことで知られるメイ氏は、時に「氷の女王(the Ice Queen)」と呼ばれる。

私は昼食を食べながら人の噂話などしません。議会のバーでお酒も飲みません。感情を露骨に表すことも多くはありません。私は目の前の仕事に取り組むだけです。

(テリーザ・メイ内相 6月30日、保守党の党首選に際して)

時に「冷たい」「よそよそしい」と評されることもあるメイ氏だが、一緒に仕事をした同僚や部下たちは、メイ氏を高く評価しているようだ。内務省の政務秘書官、ホリングベリー議員はBBCのインタビューにこう語った。

とても有能な大臣は大勢いるが、メイ氏が大臣を務めた内務省は一味違っていた。みな彼女が大好きで、愛されていた。事態が変われば考えも変わるが、これが正しい道だと一旦確信したらブレない人だ。

メイ氏自らもBBCのインタビューに「情け容赦ないところがあるとは思いません。また、保守主義以外の主義主張もありません。ただ淡々と仕事をして、自分のベストを尽くしたいだけです」と語っている。

硬いイメージで語られがちなメイ氏だが、こんな一面もある。BBCによると、メイ氏の趣味は料理。本人曰く、「100冊のレシピ本を持っている」という。また、しゃれた靴や派手なファッションを好むことで知られ、2002年の保守党集会にヒョウ柄のハイヒールを履いて登場した。

愛用のヒョウ柄の靴

■国民投票では「EU残留派」だったが、元々はEUに懐疑的

キャメロン首相とメイ内相

メイ氏は元々、EU(ヨーロッパ連合)に懐疑的な考えを持っている人物だ。キャメロン内閣では内務相として、移民やテロ対策を6年間担った朝日新聞デジタルによるとメイ氏は、違法移民に「帰国せよ。さもなくば逮捕だ」と自主帰国を促す宣伝車両を全国に走らせたこともあるなど、移民に対して厳しい姿勢をとっている。

その一方で、6月の国民投票ではキャメロン首相に従ってイギリスのEU残留を支持していた。ただ、キャメロン首相らとは異なり、表立って残留を訴えることはなかった。メイ氏は党内融和を優先するなど調整型の人物として知られる。そのため、表立った残留キャンペーンは控えたものとみられる。抵抗勢力と真正面からぶつかることを厭わなかったサッチャー元首相とは対照的だ。

次期首相になることが決まると、離脱派議員の間では今後の展開を不安視する見方も広がったが、「イギリスは、EU離脱で決まった。私たちは成功させる」と表明。国民投票の結果を尊重する姿勢を示した

かつては最低賃金制度にも反対していたが、今では労働者の権利保障を掲げる。また、テロ容疑者らの強制送還が困難だとしてECHR(ヨーロッパ人権条約)の脱退、破棄を主張していたが、党内融和を優先し、撤回する方針を示した。

ロンドンの議会議事堂前でコメントするテリーザ・メイ氏

保守党の新党首に選出され、次期首相になることが決まった11日、メイ氏はロンドンの議会議事堂前に姿を見せた。そして、キャメロン首相や党首選に出馬した他の候補を賞賛しつつ、低く落ち着いた声でこう語った

この国のためには、特権的な少数の人のために機能する国ではなく、私たち全員のために機能する国をつくるビジョンが必要です。

国民が、自分の生活を今まで以上に自分で決められるようにする。そうやって、私たちは皆で一緒に、より良いイギリスを築いていきます。

かつてサッチャー元首相は、慢性的な経済停滞による「英国病」に苦しんだイギリスの舵取りを担い、歴史に名を残した。そして2016年、メイ氏は就任早々「EU離脱」という懸案に取り掛かることになる。イギリスという国をどう導くか、その手腕に世界の注目が集まる。

【UPDATE】2016/7/14 02:08

テリーザ・メイ氏の首相就任に伴い、記事内容を更新しました。

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