7月の参院選では、18歳以上が初めて投票できるようになる。新しい世代が参加することで「政治が変わる」ことに期待が高まっているが、そもそも若者たちの政治・選挙への関心はどこに向いているのだろうか。ハフポスト日本版は、18歳から23歳の若者と一緒に国会議員や自治体の首長らを訪ね、率直で様々な質問をぶつけてみた。
民進党代表代行の蓮舫・参院議員(48)は、台湾人のお父さんと日本人のお母さんの間に生まれ、10代の頃から政治が身近だった。井手佑翼さん(23)と吉川敦也さん(18)の質問に対して、「(18歳選挙権は)今までなかった権利。使わないともったいない」と訴えた。
(左から)蓮舫・参院議員、吉川敦也さん(18)、井手佑翼さん(23)
■「今の若い人ってずっと損して大きくなっている」
——そもそも18歳選挙権に賛成、それとも反対? その理由は何でしょうか。
賛成です。待機児童、いじめ、就職氷河期、非正規雇用。若い人って、ずっと損して大きくなっているんですよね。今の政権も我々が政権を取った時も、どうしても目の前に大きな声があると流されがちになります。若者や次の世代に政治家が目を向けるよう、抗いたい、と思うのが私のスタンスです。若者の声が政治に反映されることで政治も変わるはずです。
権利は自然と降ってくるのものではなく、みんなで頑張って取得するものです。まずはそこに気づいて、「(18歳選挙権は)使わないともったいない!」と誰かが動くのが大切だと思います。
投票に行くことをきっかけに、食事や雑談をしている時に、思い切って政治の話をしてみる人が出てくるといいですね。今の若い人は、そんなことを言えば、周りに変な風に思われたり、「ウザい」と言われたりするのが心配かもしれません。でも怖がらずに、口にすれば、「あ、政治の話もしていいんだ」と共感してくれる人が絶対出てきます。その人とは一生の友達になれますよ、仲間ができます。大人になったら友達って滅多にできないですから貴重なチャンスです(笑)。
——蓮舫さんは、18歳の頃は、どんな生活を送っていましたか?
私は高校生の時、すごく政治に関心を持っていました。今の若者は、政治を語ると「ひかれる」と心配している人もいるかもしれませんが、私は孤立を恐れませんでした。18歳選挙権が導入されて、政治を語るのがかっこいいことになるといいと思います。
■台湾のルーツ「政治への関心、自然と高まる」
——今の18歳と、自分が18歳の頃と比べると何が違いますか?
先ほどの話とつながりますが、私が18歳の時はでき上がっていましたね。(台湾と日本の)ハーフというのは決定的に影響しています。台湾では、長期戒厳令が1980年代まで続いていました。言論など様々な自由が厳しく統制されていました。だから、台湾は様々な権利を勝ち取ったという文化と歴史が身近なんです。政治への関心も自然と高まりますよね。
食卓でもよくディベートをする家族でした。その日の野球のスコアと相撲の結果を家庭の中で話すように、与野党の話が普通に話されていました。私の場合、「巨人、大鵬、卵焼き、そして政治」で育ったということになります。
私が生まれてからの1960〜70年代の日本は豊かになっていく時代でした。(1955年に発売されたトヨタ自動車のブランド車を指して)「いつかはクラウン」という言葉がありましたが、将来はみんなが裕福になって、高級車を買えるのではないかという希望があったのです。
しかし、隣の国では、中国の文化大革命が起こっていて、人の命が奪われていた。チャラチャラしている場合ではない、政治に関心を持たないといけない、と思っていました。ちょっと環境が特殊だったかもしれませんが。
■島に住んでゲームアプリを作れる時代
今の若者は、生き方が多様になっているのが特徴だと思います。例えば、新潟の燕三条という地域知っていますか? 金物や刃物で有名な地域で、ブランド力がありましたが、海外の安い商品が日本に入ってくるようになり、地元産業が打撃を受けました。
そんな中、何人かが立ち上がって、今までにないタイプの工場を作りました。「一点モノ」の商品を作って勝負をかけて、伝統的な産業が再生し始めています。何か得意なことがあって、会社や工場を作ればみんなで食べていける。貯金もできる。東京で大企業に就職して働くことが「成功」とも限らないんです。
ハフィントンポストもそうですよね。どこからでも発信できて仕事ができる時代です。私が好きな与論島(鹿児島県)では、欧州からきた人が住み着いていて牛の世話をしながらゲームアプリを開発していますよ。
住む場所、暮らす場所、使うお金の規模、いろいろなことが最も自由に選択できる時代なのかもしれません。若者は不安より夢を語って欲しいです。それを邪魔しているのはもしかしたら政治や教育かもしれない。政治家も頑張らないと。
■報道に見切りをつけて政治家に
——蓮舫さんは大学を卒業して報道キャスターになった後、2004年の参院選挙で政治家に転身しました。政治家を志したのはなぜですか。
日本では子供が少なくなり、ご高齢の方が増えていますよね。私が国会議員になった時も、今も、このトレンドはずっと変わっていない。国の予算はちゃんと子供や若者に向けられているのか、疑問に思っていました。子供が少なくなっていることを問題提起したり、そうした社会に対する政策を提言したりするメディアが少なくなっていると感じました。かつて各テレビ局でドキュメンタリー番組をやっていた印象がありますが、減ってきていますよね。
報道の世界から問題提起する限界を感じました。1997年に子供が生まれて、少子化の問題にますます関心を高めていたというのもあります。メディアに見切りをつけて「法律を作る側に立ちたい」と思って議員になりました。
——台湾では2014年に、立法院(国会)を23日間占拠して政治改革を訴えた「ひまわり学生運動」が起こりました。SNSなどネット上で発信をする若者が影響力を持ちました。蓮舫さんの時と比べて、政治に疑問を持った若者が声を出しやすくなったと感じますか。
私もTwitter(約39万フォロワー)をやっていますが、犬や猫の話題や激辛料理の話題を投稿すると反応は大きいですね。それに対して、安保関連法案の話題だとシュンとなって反応が少なくなる。でもリツイートしている人を見ていると、確実に届いている人がいるのが分かるんです。
(メディアが)視聴率至上主義や販売部数至上主義に陥るのと同じで、単に反応の大きさだけを見ると、(安保法案などが)関心がないと思ってしまいますが、これからの時代、ミニマーケットに確実に届いているというのは、大事な視点なんです。例えば私のTwitterでは、発信すれば、平均で3-4万人見ていて、高いときは10万に跳ね上がります。低いときは1万人です。
1万人だと低いと感じてしまうかもしれませんが、少ないということを嘆くのではなく、少ないところでどんな仲間を作っていくか、というのが大事です。SNSがない昔だったらどんなに足で稼いでもなかなか、できないグループですよね。誰でも小さなグループを作って仲間と交流したり自分の意見を言えたりする。そういうツールが若いうちから使えることは、すごくうらやましい。うらやましくて仕方がないです。
■蓮舫・参院議員(48)
1967年東京都生まれ。青山学院大学法学部卒業。大学時代に芸能界デビュー。1995年に中国に留学後、育児をしながらテレビ出演や執筆活動。2004年参院選で東京選挙区から立候補して初当選。ブログの他、Twitter、Facebook、Instagramを使ったネット発信に積極的。男女の双子の母親。