古代エジプトのツタンカーメン王と共に埋められていた鉄製の短剣の材質が、地球上のものではなく、地球に落下した隕石であると研究者グループが発表した。
5月に発行された隕石や惑星の研究専門学術誌「Meteoritics & Planetary Science」誌の論文によると、その短剣は隕石に含まれていた鉄からつくられていた。
今回、研究が進められた短剣は、1925年、考古学者ハワード・カーター卿によって、ツタンカーメン王のミイラの棺の中から発見された2つの短剣のうちの1つ。
2つの短剣の1つは金、もう1つには鉄の刃がついている。ガーディアン紙によると、この鉄の刃の短剣は91年間、研究者たちを悩ませてきた。鉄製品は古代エジプトでは希少だったとみられるからだ。3300年以上経過しているにもかかわらず、その鉄の短剣は、錆の痕跡が全くない。
鉄の刃の短剣は金の柄と、クリスタルの柄頭を持ち、鞘にはジャッカルの頭をかたどった装飾が付いている。
ミラノ工科大学、ピサ大学、カイロのエジプト博物館の研究者たちは、非侵襲性ポータブル螢光X線分光分析を用いて、その鉄の金属組成を調査した。
「ニッケルの高い含有量から、明らかに隕鉄から取られたものです」とミラノ工科大学のダニエラ・コメッリ研究リーダーはテレグラフ紙に述べた。「その短剣の刃のニッケルとコバルトの含有率は、鉄隕石のその比率と一致していて、原始太陽系で、惑星が分化する間の原始的なコンドライトの組成比率を維持しています」
研究者グループはさらに、刃の金属組成となっている正確な隕石を特定した。
コメッリ氏は、同グループが紅海から半径2000キロメートル以内で発見された全ての隕石を調査した。これにより、20種類の鉄隕石にまでその可能性は絞られた。それらのうち、1つだけがツタンカーメン王の短剣の刃と類似した、ニッケルとコバルトの含有率を持っていた。これは16年前、エジプトのメルサマトルー付近で発見された隕石だった。
この研究結果は、紀元前13世紀の時点で、古代エジプト人たちが珍しい鉄の塊が空から降って来る現象に気づいていたということを示唆している。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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