ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は5月23日、エジプトにあるイスラム教スンニ派の最高権威機関アズハル大学の指導者、アフメド・タイーブ師とバチカン(ローマ法王庁)で会談した。AFPなどはこの会談を「歴史的な会談」と報じた。
アズハル大学は2011年以降、ローマ法王庁との会談に応じていなかった。その背景には前法王ベネディクト16世によるイスラム批判の発言があった。2006年に預言者ムハンマドの教えのいくつかが「凶悪で非人道的であった」と演説し、イスラム教徒を憤慨させた。また2011年には、エジプトで少数派キリスト教の一派、コプト教の教会がテロ攻撃を受けると「キリスト信者を対象とした暴力的な戦略」と発言。少数派キリスト教徒の保護を呼び掛けた。この発言にアズハル大学は抗議し、以来バチカンとの会談を凍結していた。
今回のバチカン訪問にあたりアズハル大学側は、双方が「平和会議」を開くことに合意したと発表。タイーブ師はフランシスコ法王に向けて「人類に幸せをもたらすために、我々はともに手を携える必要があります」との声明を出した。
2013年の就任以来、初めてアズハル大学の指導者と会談したフランシスコ法王は、今回の会談で両宗教間の関係が改善されたことを強調した。フランシスコ法王はタイーブ師と抱擁とキスを交わし、「私たちの出会いこそがメッセージになる」とコメントした。ロイターによると、ローマ法王庁は、2人が暴力とテロリズムの問題や、中東でのキリスト教徒の状況について意見を交わしたと声明を発表した。
■イスラム世界最古の最高学府の一つ「アズハル大学」とは
アズハル大学(学院)は10世紀に、ファーティマ朝時代のエジプト・カイロに設立されたイスラム世界最古の最高学府の一つ。当初はシーア派だったが、12世紀にアイユーブ朝が成立するとスンナ派の教育・研究機関となった。19世紀以降フランスの影響を受け、近代科学も取り入れた。1961年に国立の総合大学に転化、現在に至るまでイスラム神学・法学研究の最高学府として権威を保っており、全イスラム世界から留学生が集まる。
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