日本サッカー協会(JFA)は5月20日、世界女王・アメリカ代表との国際親善試合に挑む女子日本代表「なでしこジャパン」のメンバーを発表した。リオデジャネイロオリンピック予選に敗退して佐々木則夫前監督が退任し、高倉麻子新監督が就任してこれが最初の代表チーム編成となる。長くなでしこの「顔」を務めた宮間あや選手は、コンディション不良のため辞退したとして代表メンバーから外れた。
高倉監督は「年齢で区切ったわけではないが、なでしこジャパンは未来に向かって進む。進歩している、伸びている選手を選びました」と若い選手を積極的に登用する考えを明らかにした。アメリカ遠征は6月2日にコロラド州で、5日にオハイオ州で2連戦を行う。
■高倉監督の記者会見での冒頭発言と主な一問一答
新しいなでしこの出発のゲームを世界一のチームのアメリカとやれるということを非常に嬉しく思っています。ただ、アメリカはオリンピックに向けて万全の体制で臨む中で、日本はもう新しいチームで準備期間がないという中で、さらにコロラドは1600メートルの高地ですので、その高地対策も十分にできないまま、もちろん時差もあります。そういったマイナスの条件が多い中でやらなければいけないんですけれども。まあ、サッカーというのはどの大会でも、練習でも思いがけない要素が出てきます。私を含めてスタッフ、選手個人個人の対応を発揮するにはいい機会かなと思いますので、結果を恐れずぶつかっていきたいと思います。
年齢で区切ることはないということを(就任時の記者会見でも)お話ししましたが、なでしこは未来に向かって進むということも確かですので。「ベテラン勢」、今まで常連だった選手に関しては、最近見ている中で少しでも進歩している、伸びている選手を選びました。新しく入った選手はもちろん、期待を持てる、パフォーマンスをしている、コンディションのいい選手を選びました。なでしこに入れる条件というので、私が思っていることが4つあります。
1、テクニックがあってクレバーであるということ
2、走れる。持久力でもありスピードでもある
3、チームのために戦うことができる。わがままなプレーではなく、チームの中で何ができるか
4、代表への思いが強い選手
そんな選手を選んでいきたい。
今回、一番最初の戦いでこのメンバーを挙げたが、1年後、この半分が残っているかどうか私にもわかりません。今回入らなかった選手に対してもいつでも扉を開けているつもりですし、いつでも待っています。チーム作りに関して言えば、誰かが、その選手がいなければ下がるというチーム作りをしようと思っていませんので、誰が出ても変わらずチームとしての力を発揮できるチームを作りたいなと思います。
そういう一方で、「その選手がいなければチームが成り立たない」というところまで、選手には自分自身を、周囲に思わせるぐらいの力をつけられるように、日々努力してほしいなと思います。
(記者との一問一答)
--初陣ということで、再出発のチームとして見せたいことは
まず選手を集めて顔を見ていろいろなことを感じると思いますが、ずっと引き継がれているチーム力、組織力。最後まで諦めずにハードに戦うということは変わらず出していきたいと思いますし、準備のできない中でも少し話をしながら、個性を思い切って出せるようなチームにできたらなと思います。
--佐々木繭選手、中里優選手など新加入選手の具体的な「いいもの」とは
佐々木選手は先日のラマンガの国際大会で一緒にプレーをしたが、非常にテクニックをしたし、頭がいいというか戦術理解度が高い。状況判断がいいと感じています。いろんな局面を予想してさばいていく能力が高いと感じています。中里選手は小柄ですが、運動量もあり予測も優れていて、中盤のこぼれ玉も拾って、ボールをつけて前に出て行って足も触れるという強みがある。小柄なんですが、身体的にも強いですし。そういったところが海外でどのぐらい通用するのか試してみたいということで呼びました。
--1部、2部で視察された。どういったことを感じた
やはり選手、シンプルにグラウンドの中でパフォーマンスがいい選手はどの選手かなとみることにしていた。ゲームにで続けているけれど代表に呼ばれることがなかった選手がどういうことを考えているか注目してみていました。
--ベテラン勢を選ばなかった、宮間選手やなでしこの「顔」と呼ばれている選手を連れて行かなかった理由とは
宮間選手、特にベテラン勢の話が出ましたが。先程言ったように未来に向かっていくという構想の中で伸びしろを感じた選手をまず選びました。宮間選手は代表には選んだのですが、「コンディションが、今インターナショナルマッチに出るレベルにはない」ということで、本人から辞退ということで話をして、少し時間を置こうということで外しましたが、私の中では構想に入っています。
--監督自身がアメリカに勝てないで終わった世代。具体的なプランはあるか。
アメリカ戦に関しては何回か、最近の映像を見たり、今までのプレーの傾向をちょっと見ましたけれど、最初の10分15分というところで、相手は自分のパワーを生かしてたたみかけてくるような攻撃が常にあるので、そこは絶対にしのぎたいなということもあります。ワールドカップの決勝はあのような結果になりましたが、フリーキック、コーナーキック以外はそれほどやられているという感覚はないので、うまくいなしながら、自分たちのペースになるまで我慢したいなと。守ってばかりはいられませんので、どうやって点を取るかということを個人の技術、コンビネーション、アイディアもありますし、選手の特徴を把握しながらみんなで出していきたいなと思います。選手が集まって、2試合ありますけれども、1つでもいい形が出て来ればいいのかなと感じています。
--予選では10番は大儀見(永里)優季選手、今回は阪口夢穂選手に変わりました。
阪口選手は、中盤でそんなに目立たない選手だったかもしれませんが、ずっと澤(穂希・元代表)の相棒としてやって100試合代表出ていますし、日本の中でレベルを持って考えると、最高峰のものを持った選手だと思っていますので。より自覚を持って代表を引っ張っていってほしいという期待を込めて、10番をつけてもらうことにしました。
--2試合のキャプテンはどうなるか
今の時点では何人か考えているんですけれど、向こうに行ってから選手と話をして決めたいなと思っているので、まだここでは決めていないです。
--10番を変えた理由
大儀見選手はストライカーなので点を取るということに集中してほしいなと。9番、FWの点を取るというところを任せたいなということです。
--高地の難しさ、身体を順応させる期間は
1600〜700メートルと聞いています。最初の2日は順化させなければいけないということで、ぶっつけ本番の形で1戦目を迎えなければいけないのかなと感じています。フィジカルトレーナーとも相談して、2戦目はできる限りの、酸素を持っていくであるとか、睡眠も取りにくいと聞いていますので、できる限りのことを対応していきたいと思います。
--宮間選手以外に辞退選手がいるか
「ベテラン勢」で選んだのは宮間選手だけ。他の選手とは喋っていないです。
--システムでこれまでとの違いは
アメリカに勝てる魔法のシステムがあればいいんですが、誰か知ってたら教えてほしいんですけど(笑)。特に大きく変えることはないです。4−4−2であるとか4−2−3−1とか、慣れたシステムでやっていこうと思っています。試合をやっていく中で選手がやりやすいと言うシステムがあれば当てはめていこうかなと思っています。
■今試合の代表メンバー
GK
1山根 恵里奈(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
18池田 咲紀子(浦和レッズレディース)*
12山下 杏也加(日テレ・ベレーザ)
DF
2有吉 佐織(日テレ・ベレーザ)
6宇津木 瑠美(モンペリエHSC/フランス)
5川村 優理(ベガルタ仙台レディース)
4熊谷 紗希(オリンピック・リヨン/フランス)※
19佐々木 繭(ベガルタ仙台レディース)*
3村松 智子(日テレ・ベレーザ)
MF
10阪口 夢穂(日テレ・ベレーザ)
7中島 依美(INAC神戸レオネッサ)
17杉田 亜未(伊賀フットボールクラブくノ一)
15高木 ひかり(ノジマステラ神奈川相模原)*
8千葉 園子(ASハリマアルビオン)*
14中里 優(日テレ・ベレーザ)*
13増矢 理花(INAC神戸レオネッサ)
FW
9大儀見(永里) 優季(1.FFCフランクフルト/ドイツ)
11菅澤 優衣香(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
16岩渕 真奈(FCバイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
20横山 久美(AC長野パルセイロ・レディース)
*は代表初選出
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