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「若冲展」待機列の最後尾付近
「展示室に入るまで、ただいま240分待ちでーす!」。行列を整理するスタッフの声が、メガホンを通して上野公園に響いていた。
東京都美術館で開催されている「若冲展」に、観覧希望者が殺到している。江戸中期の町絵師、伊藤若冲の生誕300年を記念したこの展覧会は4月22日から始まったが、入場者数は5月10日に20万人を突破。連日形成される長蛇の列はネット上でも話題になっており、Twitterでは待機列の待ち時間の長さを題材にしたユーモアあふれる投稿もあった。
ハフポスト日本版は5月20日、東京都美術館で待機列の様子を取材した。
■午前11時で240分(4時間)待ち 「ディズニーランドより並んでるよ…」
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待機列の最後尾
平日にもかかわらず、待機列は午前11時の時点で美術館の敷地外まで伸びていた。並んでいる人の年齢層は中高年が多いようだ。中には杖をついて列に並ぶ高齢者の姿もあった。最後尾には「入室まで240分待ちです」と書かれたプラカードを持った美術館スタッフの姿が。このスタッフによると「どのぐらいの人数が並んでいるかはわからない」「この時間が(混雑の)ピーク」だという。
こうして話を聞いている間にも、列にはどんどん人が並んでいく。「240分待ち」の文字を見て、「ディズニーランドより並んでるよ…」とこぼす人の姿も。「今日は諦めて、明日朝早くに出直してきます」「展示品の図録だけ買って帰ります…」という人もいた。
東京都小金井市から来た80代の夫婦は「テレビと新聞(で紹介されているの)を見て、試しに来たけど、こんなに並んでいるとは…」と困惑していた。また、横浜市から来た70歳の書道講師の女性は「若冲が好きで見に来たが、あまりの列にびっくり。一昨年に東京国立博物館であった故宮博物院展の列もすごかったけど、今回はそれ以上の列じゃないかしら」と驚いていた。
試しに最後尾から美術館の入り口まで列をたどって歩いたところ、10分ほどかかった。時間を潰すため、文庫本などを手に持ちながら並ぶ人の姿もあった。
■入場まで4時間待ち 過去には体調を崩した人も
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日差し対策のため、美術館前に設けられたテント
5月中旬の東京は汗ばむ陽気の日もあり、28度に達する日もあった。美術館の正門にいた美術館スタッフによると、過去には待機列で体調を崩した人もいたという。そのため、「テントなどを設けて、少しでも暑さをしのげるようにしています」と話す。待機列の途中には、2カ所の無料給水スポットも設けている。また、水分補給を呼びかけるなど、熱中症への注意を呼びかけるポスターもあった。
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無料の給水スポット。美術館の入り口と列の途中の2カ所にあった。
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水分補給と体温調節を呼びかけるポスター
■連日の大混雑、なぜ?
なぜこれほどの人が殺到しているのか。正門前にいた美術館スタッフに尋ねると「テレビで紹介された影響かもしれませんね。お客様の中にも『テレビを見て、観覧しにきた』という方が多いです」「当初、1日あたりの来場者は1万人ぐらいと見込んでいましたが、いまは連日1万7000人ぐらいの方がいらっしゃいます」と、混雑ぶりに戸惑っていた。
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展示室への入り口。室内の混雑を避けるため、入場規制がかけられていた
11時過ぎの時点で先頭にいた40代の女性会社員は「仙台から来ました。朝8時から並んで…。でも、前後の人とお話したりできたので、楽しかったです。入場待ちの3時間で友達ができました」と笑っていた。また、「地方から来ている人は泊りがけの人も多いですよ」と教えてくれた。
展覧会の当日券を購入するためにも、30分ほどの待機列ができていた。誘導をしていた美術館スタッフによると「今日は朝8時45分に開館したが、先頭のほうの人は4時とか5時ごろから並んでいました」という。
■国立西洋美術館「若冲展を諦めた人が…」
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国立西洋美術館
取材の帰り道、同じく上野にある国立西洋美術館に立ち寄った。チケット販売列のスタッフは「若冲展を諦めて、こちらにいらっしゃる方も結構いますね」と話す。同美術館では6月12日まで「カラヴァッジョ展」を開催している。世界遺産に登録される見通しとなった影響については「報道の影響でそこまで来場者が増えているということはないですね。展示室には比較的早く入れますよ」という。
「若冲展」は5月24日まで。待ち時間は公式Twitterで確認できる。
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「若冲展」のポスター
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