■旅行先のメキシコで急死
Facebookのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)が5月14日、カリフォルニア大学バークレー校の卒業式のスピーチで、「人は、どんなことを成し遂げたことだけでなく、(悲劇的な状況を)どう耐え抜いたかで判断される」と語った。サンドバーグ氏は、2015年5月、当時、アメリカのインターネット調査大手の「サーベイモンキー」の最高経営責任者(CEO)だった夫のデイブ・ゴールドバーグ氏を旅行先で亡くしている。夫はまだ47歳だった。
サンドバーグ氏が夫の死について公の場で話すのは初めて。サンドバーグ氏は、「1年と13日前、私は夫のデイブを失いました。彼の死は突然で、予想外でした」と静かに語り始めた。二人は友人の50歳の誕生日を祝うため、メキシコで休暇を取っていた。サンドバーグ氏が昼寝をしている間、夫はジムに運動をしに出かけた。
「そのあとの出来事は想像外のことでした。ジムに行くと、彼が床に倒れていたのです。自宅へ飛んで帰り、子供たちに父親が亡くなったことを伝え、彼の棺が運ばれるのを見ているだけでした」。
「(悲劇的な)出来事が起こるかどうかが問題なのではありません。必ず起こるからです。本日、私はそうした出来事の『次に起こること』について話します。あなたの、ど真ん中のところに影響する困難な日々が、あなた自身を形づくるのです」。
■「もっと早く私が気づいてあげれば」
サンドバーグ氏はここで、「3つのP」というキーワードを掲げながら、自分が夫の死とどう向き合っているかを伝えた。1つ目のPは「Personalization (物事を自分ごととして考えること)」。サンドバーグ氏は当初、死を自分のせいにしたという。彼の医療記録をひっくり返し、「何か事前に対策を取れたのではないか」と思いつめた。
「しかしながら、私にはどうしようもできないと気づいたのです。(失敗や悲劇を)自分だけのせいにしないことは、私たちに回復する力を与えます」。
2つ目のPは「Pervasiveness(波及力があること)」。一つの良い出来事で人生が楽しくなったり、逆に一つの悲しい出来事で生活全てが暗くなったりする現象のことだ。サンドバーグ氏は、夫が亡くなって10日後に仕事に復帰。
Facebook社での会議中も集中できず、参加者を見渡し、「この人たちは一体何を話しているの?何の意味があるの?」と考えいていた。だが、ふとした瞬間に議論にのめり込んでいる自分に気づいた。
「その瞬間、私は死を一瞬忘れたのです。その一瞬で、人生は最悪なことだけでないことに気づきました。私も子供も健康で、友人たちや家族が優しくしてくれていることに気づきました」。
3つ目のPは「Permanance(永続性)」。哀しみは永遠に続くものではない、と言い聞かせることの大切さを説いた。
■ザッカーバーグCEOからもコメント
サンドバーグ氏は、スピーチの後半部分で、友人からかけられた言葉も紹介したーー「もっと悪いことが起こらなくてよかった、と考えればいい」。
「え?」とサンドバーグ氏は一瞬耳を疑った。「冗談なの?これ以上悪いこと?」。
しかしながら、友人の次の言葉でハッとしたという。「もしデイブが子供を車を乗せて運転中に突然亡くなっていたらどうなっていた?」。
サンドバーグ氏は「私は夫をなくすことで、友人や家族への深い感謝の気持ちに気づかされました」と締めくくった。
サンドバーグ氏のスピーチは約25分。時折、言葉に詰まって涙目になりながら語りかけた。本人のFacebookページにはマーク・ザッカーバーグCEOから「美しく、インスピレーションを与える。ありがとう」とスピーチに対するコメントが寄せられている。