移民受け入れ「2020年に宣言を」 元法務官僚の坂中英徳氏が提言

超高齢化社会の進展による日本社会の衰退と崩壊を、移民受け入れで解決すべきだ――。

超高齢化社会の進展による日本社会の衰退と崩壊を、移民受け入れで解決すべきだ――。

移民受け入れへの政策転換を持論として主張してきた元東京入国管理局長の坂中英徳氏が、新著『日本型移民国家の創造』(東信堂)を出版したのを機に、5月12日、東京の日本外国特派員協会で講演した。

坂中氏は「国民世論はある程度動いた。これをもって政府に決断を仰ぎたい」と述べ、東京オリンピックが開催される2020年までに移民受け入れ体制を整備し、移民開国宣言をすべきだと提言した。

坂中氏は、高齢者人口の増加と若年人口の減少で経済も年金などの社会保障が崩壊の危機に瀕しており「ゆくゆくは日本と、貴い日本文化を背負った日本人が消えるというとてつもない危機」を迎えているとして、「日本列島の中で、世界のいろんな国から来た移民を日本人が温かく平等に受け入れ、日本列島の中に人類共同体、心が一つに成り平和な社会をこの50年、100年かけてつくってはどうか」と提言した。

具体的には、移民法を制定し「世界のあらゆる民族、人種、宗教を平等に幅広く受け入れる」ことを長期的な課題として定め、友好国と移民協定を結んで移民を送り出してもらうとした。事実上の外国人労働者の受け入れ手段となっている技能実習制度は「現代版奴隷制度」と批判が高いとして、廃止を求めた。

坂中氏は、2015年7月23日の経団連夏季フォーラムで、榊原定征会長が人口減少社会への対応として「移民に頼らざるを得ない」と述べたことや、石破茂・地方創生相が「移民受け入れを進めるべきだ」と発言したことなどを紹介。2015年8月26日付の読売新聞に掲載された世論調査で「日本に定住を希望する外国人を移民として受け入れること」に、20歳代の50%が賛成(反対49%。全体では賛成38%、反対61%)したことを挙げ、「人口崩壊の危機感がどんどん報道された。町や村が消え、女性が子どもを生まない時代が続くという危機感が日本社会に広まった」と分析。「もし移民鎖国を続けたままオリンピックを迎えれば、人口崩壊の問題はより一層深刻化する。経済は弱り、社会移動が減るため、出生率が低く、高齢化率が高い東京の人口減、衰退が始まる。そんな国に『移民に来て下さい』と言っても来ない」と、早期の体制整備を訴えた。

ヨーロッパのシリア難民や、相次ぐテロなど、移民施策を背景にした社会的な混乱について、ハフポスト日本版が質問すると、坂中氏は「5年前にこういうことが起きていれば『移民を受け入れたら大変なことになる』という逆風が吹いたかもしれないが、今は逆に受け入れ容認論が高まっている。それだけ人口崩壊の脅威が広まっているということだ」と述べた。逆にシリア難民を年間1000人規模で受け入れるべきだと主張。教育などの受け入れ態勢を整備し「世界第3位の経済大国の日本が千年来の移民鎖国を破って、日本の存在価値を世界にアピールできるビッグチャンス」だと訴えた。

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