ケリー長官の広島訪問、海外メディアはどう報じたか?

韓国メディアは厳しい見方で報じているのに対し、英米メディアは訪問の意義を中心に伝えた。

アメリカのケリー国務長官は4月11日、G7外相とともに広島市の広島平和記念資料館(原爆資料館)を参観し、平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花した。このニュースは、海外でどのように報じられたのか。韓国メディアは厳しい見方で報じているのに対し、英米メディアは訪問の意義を中心に伝えた。

■韓国・KBS「黙祷のとき、少しだけあごを引いた」

KBSは「アメリカ政府は今回の訪問が、謝罪と解釈されることを警戒しています」として、黙祷の時のケリー氏の姿を「あごを少し引いただけで、全体的に厳しい姿勢を維持しました」などと報じた。

黙祷風景。 左からドイツのシュタインマイヤー外相、日本の岸田文雄外相、アメリカのケリー国務長官、英国のハモンド外相、カナダのディオン外相(Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)

■韓国・朝鮮日報「日本の『加害』を希釈」

朝鮮日報は、ケリー氏らは献花の後、「日本の第二次大戦敗戦の象徴格である『原爆ドーム』を訪問した」と記した。記事は、安倍政権が「核軍縮と核不拡散の動きを示すとともに、日米間の強固な結束を国際社会に知らせようと構想したものと見られる」と分析。「第2次大戦に敗戦したことでできた『平和憲法』の改正を模索する状況で、ケリー長官の平和公園訪問が、戦争を起こした日本の『加害』を希釈させ、『被害』を浮上させる結果につながる可能性があるという懸念もある」と報じた。

■アメリカ・ABC「重々しい空気は、児童の歓迎によってたち消えた」

ABCは「(献花)式典の重々しい空気は、約800人の日本の児童が旗を振って歓迎したのでたち消えた」などと書かれたAP通信の記事を伝え、12日午後2時現在、Facebookで1000回以上シェアされている。

記事は、「アメリカ人の多くは、戦争を早く終らせるために原爆を投下したのは正義だと考えている」とする一方、「日本政府や遺族はアメリカに対して謝罪を求めていない」として、71歳の広島に住む飲食店オーナーの「世界の未来や次の世代の平和のことを考えると、(謝罪が)必ず必要だなどとは思わない」というコメントを伝えた。また、「爆心地からすぐそばのところへのケリー長官の訪問は、アメリカの進化を完遂させた」と分析した。

■アメリカ・WSJ「ケリー国務長官は、岸田外相の背中に手を回した」

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、「日本とアメリカの両政府はこれまで、大勢の人を殺害した原爆投下について、アメリカが謝罪すべきかどうかを慎重にバランスを取ってきた」と説明。しかし、アメリカ人の多くは、謝罪の姿勢は、どんなものであろうとふさわしくないと考えていると報じた。

一方で、WSJは献花式典のワンシーンを写真に添えた。そこには、献花の後にお互いに背中に手を回している岸田文雄外相とケリー氏がいた。

ABC「式典では、ケリー国務長官の公式の発言はなかった。広島出身の岸田文雄外相の背中に手を回し、何かをささやいた姿が見られた」

■アメリカ・NYT「日本人はアメリカが難しいということを理解している」

ニューヨーク・タイムズは、東京財団上席研究員で外交・安全保障が専門の渡部恒雄氏のコメントを紹介した。渡部氏は「一部の日本人は、アメリカ人の謝罪の言葉が聞きたいかもしれないが、日本人のほとんどはそうではない」と説明。日本の保守層が安全保障上の理由からアメリカに謝罪を求めていないことや、リベラル層もアメリカのオバマ大統領が反核のメッセージを伝える目的で広島を訪問すれば、謝罪の言葉がなくても納得するとの考えを述べた。

渡部氏はさらに、「アジアの国々と日本にある謝罪政治とは異なり、ほとんどの日本人は、アメリカの指導者が謝罪することは非常にハードルが高いということを理解しています」と話したという。

子供たちと記念撮影するG7外相ら(Photo by Michael Gottschalk/Photothek via Getty Images)

■イギリス・ガーディアン紙「核保有国の外相も初めて広島へ」

ガーディアンは、ケリー国務長官と共に、イギリスのフィリップ・ハモンド氏とフランスのジャン=マルク・エロー氏も、核兵器を保有する国の外相として初めて、平和記念公園を訪れたことを伝えた。

また、ハモンド氏が共同通信に語ったという、「私たちはここに来ることで、未来の戦争を回避し、平和的な解決策を見つける責任があることを認識、痛感します」という言葉も伝えた。

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