2017年4月に予定される消費税率10%への引き上げについて、安倍晋三首相が先送りも含む検討に入ったとの報道が相次いでいる。安倍首相が本当に引き上げを先送りの決断をするのか、注目されている。
「リーマン・ショックあるいは大震災のような事態が発生しない限り、来年、予定通り引き上げていく考えに変わりはない」
安倍首相は3月29日、2016年度予算成立を受けて記者会見し、消費税引き上げの延期は考えていないと強調した。
ただ、朝日新聞は26日付朝刊の1面トップで「首相、消費増税先送り検討」と報じ、その理由として「年明け以降の世界経済の変調などで、増税できる経済環境が整わない可能性もあると判断した」と説明している。
読売新聞は18日朝刊の1面で「消費増税先送り検討 首相 経済減速に配慮」の見出しで伝えた。また毎日新聞は29日、「衆参同日選、5月に判断 増税是非も」の見出しで「景気の減速が深刻化した場合は、内需拡大策の一つとして消費増税の再延期を視野に入れる。増税を予定通り実施する場合は、財政出動の規模が拡大する」との見方を示した。
さらに産経新聞は27日付朝刊1面で、「消費税10%再延期へ」という見出しで「検討」よりも踏み込んで「引き上げを見送る方針を固めた」と報じた。安倍首相が引き上げを先送りする背景について、次のように伝えた。
年明け以降、中国経済の失速や原油安の影響で円高、株安が進んだ。国内景気はGDPの6割を占める個人消費が低迷し、政府は今月23日発表の月例経済報告で5カ月ぶりに景気判断を下方修正した。こうしたこともあり、首相は税率10%への引き上げについて「経済が失速しては元も子もなくなる」と慎重な姿勢もにじませてきた。
(消費税10%再延期へ 安倍首相が方針固める 5月に正式表明 - 産経ニュースより 2016/03/28 07:49)
■ノーベル経済学賞が増税先送り求める
増税をめぐる駆け引きがヤマ場を迎えつつあるなか、外国の学者も日本の消費税について言及、首相の判断に影響を与える可能性があると指摘されている。
安倍首相の意向で16日に始まった「国際金融経済分析会合」では、いずれもアメリカのノーベル経済学賞受賞者であるプリンストン大のポール・クルーグマン名誉教授やコロンビア大のジョセフ・スティグリッツ教授が「日本を含め世界経済は弱さが蔓延している」「2016年はリーマン・ショック後で最悪だった2015年より弱くなる」と消費税増税の先送りを強く求めた。
共同通信はこの会合について、「増税延期の環境整備」との声もあると解説している。
Q 増税先送りのためのお膳立てなのですか。
A 政界では「勉強会」という説明を額面通り信じる向きはほとんどありません。学者の意見は前もって分かっていることです。「人選からして会議は増税延期の環境整備」と話す与党の政治家もいます。安倍首相は2014年秋も専門家を集めて会議を開いてから増税延期を決断し、衆院解散・総選挙に突入し勝利しました。二匹目のどじょうを狙っているようにも見えます。今年は3年に1回の参院選があるため、ダブル選の可能性も高まっています。
(【Q&A】消費税で駆け引き激化 米学者発言、増税先送り論急浮上 - 共同通信 47NEWSより 2016/03/28 16:00)
安倍首相は、今後の会合でさらに世界経済の動向を分析するとともに、5月18日に発表する2016年1-3月期国内総生産(GDP)も見極め、5月末の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)前後に増税の是非を表明する見通しだ。先送りを首相が最終判断した場合、衆院を解散して夏の参院選と合わせた「衆参同日選」に踏み切るとの見方も出ている。