2001年の9・11事件の後、アメリカではコーランの売り上げが急速に伸びた。テロが起こった理由を探すため、もしくはイスラム教徒に対する偏見の背景にあるものを知るために、人々はコーランを手にしたのかもしれない。
さらに2015年に起こったパリ同時多発テロや、過激派組織「イスラム国」(IS)の勢力拡大を受けて、コーランの発行部数は伸びている。しかし、人々がよりイスラム教を理解したり、尊重したりするようになったかといえばそうでもない。むしろ、イスラム教に対する恐れや偏見は増加しているくらいだ。
「これは、世界中が宗教に対して無知になってきていることを示しています」と話すのは、ハーバード神学校・宗教理解プロジェクトの責任者、ダイアン・ムーアさんだ。この無知と戦うために、ムーアさんたちは世界の宗教について教える無料のオンラインコースを始める。
立ち上げに携わったのは、ハーバード大学やハーバード神学学校、ウェルズリー大学の5人のスタッフ。講座は、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が2012年に立ち上げたエデックス(edX)と呼ばれるオンラインコースプラットフォームを使って行われる。
このタイミングで宗教のコースを立ち上げた理由を、ムーアさんはこう述べている。「宗教的無知は偏見や嫌悪感をあおります。世界や国や地域で人々が協力しようとする時、その妨げになるのです」
コースは全部で6クラス。それぞれ4週間続き、ムーアさんは、3月1日から始まる最初のクラス「宗教を理解する:宗教の教えと聖なる書物」を教える。残りのコースでは、キリスト教、仏教、イスラム教、ヒンズー教、ユダヤ教の5つの宗教を取りあげる。
宗教を理解するとはどういうことなのか。ムーアさんはこう説明する。
「宗教の理解とは、イスラム教の五行や仏教の4つの聖なる真実を知る、といったこと以上を意味します。ただ教えを知るだけでは、宗教の中身はどれも同じだという間違った考えを持ち、歴史に目を向けるのをやめるようになってしまうでしょう」
「そうではなく、宗教を理解するとは宗教の教えが多様性に富んでいると同時に進化し続けるものであること、そして人々の生活に様々な影響を与えているものだと知ることです」
そのためオンラインコースでは、歴史の理解や、聖典の解釈の仕方、なぜある人々は聖人になるのかといったことを教える。生徒には、聖典の現代的解釈や歴史的解釈に取り組んでもらい、聖典がどれだけ多様性に富んでいるかを知ってもらう。
無料で聴講できるオンラインコースなので、ムーアさんらは約5万人の聴講者を見込んでいる。修了証書を取得したい人のためには、50ドル(約5500円)の有料コースも用意されている
誰でも聴講できるが、特に教育に携わる人や異なる宗教間の対話に興味を持つ宗教関係者たちを対象にコースは設置されている。
「知識に基づいた対話の場を提供できることに、とてもワクワクしています」。ムーア氏は、期待を込めてこう述べた。
コースを紹介した動画(英語)
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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