北朝鮮の核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射実験を受け、韓国で核武装を支持する論調が高まっている。
2月15日に発表された韓国紙・中央日報の世論調査では、「とても賛成」(32.8%)「ある程度賛成」(34.9%)を足した数字が67.7%に達し、「どちらかといえば反対」(20.9%)「とても反対」(9.6%)を上回った。1月15日の韓国ギャラップの調査でも、賛成54%、反対38%となっており、賛成論が反対論を上回っている。
与党・セヌリ党では、1月7日の党最高委員会で元裕哲(ウォン・ユチョル)院内代表が「北朝鮮の恐怖と破滅の核に対抗し、我々も自衛権のレベルで平和の核を持つときが来たと判断している。我々の安全保障は誰も守れない」と発言するなど、党幹部から核保有や核開発を求める発言が相次いだ。
保守系の最大手紙・朝鮮日報も「核武装論」を展開した。ベテラン記者の金大中顧問は「我々はなぜ核の決断をできないのか」というコラムで「核武装に関する論議から始めよう。避けられないなら(朝鮮半島)非核化宣言の破棄と、核不拡散条約(NPT)脱退も覚悟しよう。それに伴うどんな不利益も受け入れる意思があることを国内外に宣言しよう(中略)。北朝鮮のどのような挑発にも、何倍の報復攻撃を加える姿勢を公言しなければならない」と述べた。
■原子力開発への「不公平感」
北朝鮮への対抗手段としての核武装は、朝鮮日報だけでなく韓国の保守強硬派が以前から言及していた。「貿易依存度が85%に達する韓国は、対外経済依存度が極端に低い北朝鮮や、莫大な原油埋蔵量を持つイランとは事情がまったく異なる。韓国が核武装を口に出した瞬間、外国人投資家は離れ、株価など経済指標が暴落することを国民や企業は受け入れられるのか」(『新東亜』2011年3月号)という反論もある。
核武装論が台頭する現実的な背景として、核燃料の再処理を巡る「地位向上」の悲願がある。
日本がアメリカとの原子力協定で、使用済み核燃料の再処理によるプルトニウム抽出を認められているのに対し、韓国は軍事政権時代に独自の核開発を目指した経緯もあり、1974年に発効した米韓原子力協定で再処理を禁じられた。
2015年の米韓協定改定で初めて、実験用低濃縮ウランの開発に道が開かれたが、原発由来のプルトニウムを大量保有する日本に「なぜ同じ同盟国の日本はよくて、韓国はだめなのか」という主張は以前からあった。
朝鮮日報の別の論説委員はコラムで、NPT体制下での核開発は、インドでもパキスタンでもイスラエルでもなく、日本をモデルにすべきだと主張した。
核カードは、核武装を始めるのではなく、相手が核を持てば自分も持てるという能力を信じさせることだ。この点で参考になるモデルが日本だ。日本は発電用の名目でプルトニウムを47.8トン保有している。核爆弾6000発を製造できる量だ。日本当局者は核武装を主張したことはない。(中略)
日本は今、韓国の核武装論に注目している。彼らの関心は2年後、30年の期限を迎える日米原子力協定と関係がある。韓国の核武装論は、日本と韓国の『核の主権の公平性』に及ばざるをえない。静かにしていれば自動延長される特権が、韓国の核武装論で吹き飛ぶことを恐れている。我々が核の主権を得る仮定で、逆に活用できる部分だ
中国への経済的依存度を強める韓国で、アメリカの「核の傘」への不信感が高まっていることも要因の一つとみられる。鄭成長・世宗研究所統一戦略研究室長は韓国日報に対し「韓国が、アメリカの核の傘や戦術核兵器に全面的に依存していると、韓国の外交的自立度が狭まり、現在のように、中国との関係が悪化する」と述べている。
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