楽しい空想にふけっていると、幸せな気分になれる。
しかし、楽しい空想は一時的には気分を良くするが、長期的な目で見るとうつ病の症状を悪化させる可能性がある、という驚くような研究結果が発表された。
研究では、アメリカのニューヨーク大学やバージニア大学、そしてドイツのハンブルク大学の科学者たちが4つの実験を行った。
その一つでは、88人の大学生に自分に関する12の空想をしてもらった。そして心に浮かんだ考えやイメージを書きとめて、空想がどれだけポジティブだったかを評価してもらった。
実験の後にうつ病の症状を測るためのテストをしたところ、ポジティブな空想をした学生は点数が低かった。しかし1カ月後には、よりポジティブな空想をしていた学生の方が、ポジティブではない空想をしていた学生よりも、うつ病の点数が高くなっていた。
他の3つの実験でも同様の結果が観察された。
研究は、ポジティブな空想がうつ病を引き起こすことを証明してはいない。しかし、長期的なプラス思考が憂うつな気分を引き起こす危険因子となり得ることを示している。
普通、幸福で成功した人生を送るためにはプラス思考が大切だと考えられているが、今回の研究結果は、それとは全く反対の可能性を示唆している。
「現代社会では、常に物事をプラスに考えることが大切だと考えられています。プラス思考のための自己啓発関連マーケットは96億ドルにものぼり、成長を続けています。実験は、プラス思考を求める傾向が、人々や社会の長期的な幸福にマイナスの影響を与えているのではないか、という疑問を投げかけています」と研究者たちは書いている。
一方で、「プラス思考が悪い、もしくはネガティブ思考がいい、ということではありません。目的を達成するには、ふさわしい方法でプラス思考や空想をする必要があります」と研究に参加した、ニューヨーク大学心理学部のガブリエル・エッティンゲン教授は述べている。
ふさわしい方法のプラス思考とは?ただ願ったり空想したりするのではなく、現実的に立ちはだかる障害物について考える必要があると エッティンゲン教授は述べる。
例えば、家族の誰かと関係を修復したい場合、修復された幸せな状態に思いを巡らせるではなく、それを現実にするための具体的なステップについて考えた方がいい。
エッティンゲン教授は、このプロセスを「メンタル・コントラスティング」と呼ぶ。メンタル・コントラスティングができる人は、障害を克服できる傾向が高いと言う。
※研究は「サイコロジカル・サイエンス」誌オンライン版に、1月29日に掲載された。
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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