世界保健機関(WHO)は、ジカ熱の国内で感染が確認されている国や地域が24に上ると公表した。南米のブラジル、パラグアイ、コロンビア、中米のメキシコやエルサルバドルなど、広い範囲にわたって感染が広がっており、今後1年間で、感染者が「300万から400万人」と爆発的に増加する可能性を警告した。1月30日、朝日新聞デジタルなどが報じた。
ジカ熱とは何か。世界に広がるジカ熱の感染状況や、新生児への影響、生活の注意点をまとめた。
■ジカ熱、蚊に刺されることで人に感染
蚊を媒介して感染するジカ熱は、アメリカ全土でも増加傾向にあり保健当局でも懸念が広がっている。一般的に、このウイルスは命を脅かすものではないが、ブラジルとフランス領ポリネシアで最近増加している先天的欠損症が、ジカ熱の影響による可能性もあるという。この地域では、(他と比べて)ジカ熱の感染は一般的だ。
2015年12月10日、パナマ当局は、ジカ熱に感染した国内最初の症例を発表した。これは、他の地域を旅行したのではなく、国内で蚊に刺されて、ジカ熱に感染したことを意味する。
12月1日の時点で、汎アメリカ保健機構(PAHO)は、ジカ熱に関する警告を発していた。当時すでに、ブラジル、チリ(イースター島)、コロンビア、エルサルバドル、グアテマラ、メキシコ、パラグアイ、スリナム、そしてベネズエラで症例が報告されていた。
ジカ熱は、デング熱や黄熱病、ウエストナイル(ウイルス)感染症を引き起こすウイルスに近い。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によると、ジカ熱の症状には、発熱や発疹、関節痛などがあるそうだ。一般的に、感染した蚊に刺された後、約3〜7日で症状が出て、最長1週間ほど続くという。感染者は、症状を和らげる治療を受けられるが、今のところジカ熱のワクチンや治療薬は開発されていない。
これらの感染症は、ヤブカに刺されることで人に感染する。いくつかの種を含むヤブカ属の蚊は、ジカ熱に似た他のウイルスも媒介する。ネッタイシマカとヒトスジシマカのカ科が、ジカ熱の主なキャリア(保有者)であり、南極大陸を除くすべての大陸に生息している(ヤブカの写真はこちら)。
■ジカ熱の影響、ブラジルでは赤ちゃんの「小頭症」が急増
「感染症ジャーナル」に発表された2009年の調査によると、1954年にナイジェリアで初めて人から検出されたジカ熱は、2007年に南太平洋で最初の症例が発見されるまで、主にアフリカやアジア地域に限定されていたようだ。
2013年、フランス領ポリネシアで起きた大発生では、1年間に1万9000件の(感染の疑われる)疑似症患者が報告され、この地域でデング熱以外の感染症が発生したことが明らかになった。同地域で感染した日本人も帰国後に発症し、国内で初めてジカ熱の患者が確認された。それ以降、ジカ熱はアメリカ全土でも急速に広まった。
ブラジルの保健当局は2015年10月、ジカ熱のウィルス感染により、脳と頭の未発達を伴う先天的欠損症、「小頭症」と呼ばれる先天性の疾患が多く発見されたと指摘。PAHOによると、特にブラジルの地域で、ジカ熱の感染による影響が大きかったようだ。
ウイルスの影響は、新生児の羊水で見られた。これは、ジカ熱が先天的欠損症に関連があったという保健当局の懸念を裏付けるものだった。研究グループは、小頭症の新生児が2010年と比べて、2015年に20倍に増加していると報告した。特に2015年10月以降、症例数が急増。ブラジル26州中14州で、計7人の死亡例を含め1248件の小頭症の症例が報告された。
■肌の露出を避け、蚊帳や防虫剤の使用を
フランス領ポリネシア当局も、ジカ熱の流行により、胎児や新生児に脳の欠陥や障害が増加していると報告した。いずれの母親にもジカ熱の症状が見られなかったが、テスト結果では、彼女たちの内4人がこのウイルスを媒介していた可能性があることが示された。
アメリカの保健当局は、ジカ熱に感染が報告されている地域の妊婦は、とくに妊娠初期の場合、感染の可能性を特に警戒するよう促している。
CDCも、旅行者に対して、特に南アメリカやメキシコ、中央アメリカの国々を訪れる予定の妊婦に対して注意を呼びかけている。蚊から身を守るため、肌の露出を避け、ドアや窓を閉め切り、蚊帳や防虫剤を使用することを勧めている。蚊の活動がより活発になる日中は特に注意が必要だ。
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