そのガリガリに痩せ細った犬には生きのびる見込みはないと思った。ただ尊厳を持って死ねる場所を与えてあげたかった。だけど、生き残るために必要だったのは、ほんの少しの愛だった ―― 。
財政危機が長引くギリシャは、たくさんの野良犬であふれている。アテネに住むヴァリラ・オルファニドーさんは、そういった野良犬たちを助けるために、動物保護団体のFacebookをフォローしている。毎日可哀想な犬や猫を見ているうちに、段々写真を見慣れるようになってきた。
しかし2014年11月のある日、ページをスクロールしていた彼女は一枚の写真に衝撃を受けた。犬は体を小さく丸めて歩いており、肋骨が浮き出るほど痩せ細っていた。
「まるでテレビゲームの中に出てくるゾンビのようだ、ニセモノの写真ではないか、とコメントする人もいました」とオルファニドーさんはハフポストUS版に語った。
オルファニドーさんも、写真が本物かどうか確信が持てなかった。しかし、「動物を助けたいと思っている人は、事実を確かめる」と話すオルファニドーさんは、実際に自分の目で確かめに行った。そして引き取ることを決めた。
ビリーはひどい健康状態にあり、伝染性の皮膚病にかかっていた。
オルファニドーさんによると、犬にエサを与えていたのは、あるパキスタン人の移民男性だけだった。男性は、犬を探し出し救助するための手助けもしてくれた。その男性、ビリーに敬意を表して犬はビリーと名付けられた。
オルファニドーさんが最初にビリーに会ったのは動物病院だった。ビリーは衰弱しきっており、檻から出てこようとさえしなかった。
「彼の姿を見て、大きなショックを受けました」とオルファニドーさんは述べる。そして自分にできるのは、安らかに死ねる場所を提供することだけだと思ったという。
助からないと言われるだろう、と信じていた(写真:VALIA ORFANIDOU)
しかし予想に反し、ビリーは助かるだろうと獣医は彼女に告げた。
「思わず笑ってしまいました。信じられなかったんです。そして今度は待ちきれなくなりました。回復する姿をどうしても見たくなったんです」と、オルファニドーさんは述べた。
彼女はビリーを家に連れ帰り、浴室の一角にゆっくりすごせる小さなスペースを作った。
オルファニドーさんの家に着いたビリー。とにかく快適に眠りたかった。
その時のことを振り返って、オルファニドーさんはこう話す。「ビリーをただ眺めていました。体に触れたら痛がるんじゃないかと思い、手を伸ばせなかったんです。体全体がまるで大きな傷口のようでした」
しかしエサを置いて部屋を後にすると、ビリーが食べ始める音が聞こえてきた。それを耳にしたオルファニドーさんは、ビリーに生きる意志があると確信した。
ビリーの食欲はオルファニドーさんに希望を与えた。
それから2カ月後。ビリーはすっかり変わった。
体は美しい黒の毛に覆われ、足取りは活力で満ちていた。
わずか2カ月で、ビリーはすっかり変わった。
「おもちゃを噛むのが大好きです」とオルファニドーさんは話す。
完全に回復した後、ソーシャルメディアでビリーを知った女性が彼を引き取った。
新しい里親は素晴らしい人だったが、ビリーを手放すのはオルファニドーさんにとってとても辛いことだったという。
今ではぐっすり眠るビリー。愛に囲まれていることを知っている。
「たくさんの犬の里親になってきましたし、アテネの犬保護施設でボランティアもしています。でも、一匹の犬がこんなに劇的に快復していく姿を、今まで見たことがありません。手放すのが本当につらかったです。ビリーと私は一緒に奇跡を体験しましたから」
オルファニドーさんとビリー、そしてビリーを引き取ったエマさん(左の女性)の間には、特別な絆が生まれた。
「ビリーがもう一度生まれてくるための手助けをしたように感じます」と、オルファニドーさんは話す。
下の動画は、ビリーの物語を詳しく紹介している。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー