イラン、レバノン、イラクなどのシーア派指導者は、サウジでの反政府活動を支援し、2012年に逮捕されたシーア派聖職者ニムル師の処刑は、サウジ王政の凋落につながると激しく非難してきた。サウジの大量処刑はヨーロッパからも批判されており、ニムル師の死で、中東の宗派間の対立が激化するとの指摘もある。
サウジ内務省は、死刑囚はテロリストだったと主張する。ニムル師以外は、少なくとも3人のシーア派の政治犯と、アルカイダの戦闘員との容疑をかけられている人々だ。シーア派はサウジアラビアの人口の約10%を占める。
サウジアラビアの人権を巡る国内、国際状況についてまとめた。
■「魔術を使った」として斬首刑
2014年6月24日、インドネシアのジョグジャカルタで、サウジアラビアで執行されたインドネシア人家政婦の処刑に抗議する人々
サウジでは、死刑は通常、刀での斬首で、公開処刑として執行されるほか、公衆による投石などもある。
サウジの死刑はこれまでもたびたび、大きな国際問題になってきた。2015年1月には、継娘を暴行して殺害したとして捕らえられたミャンマー人女性が、無実を訴えながら路上で首を切られた。2011年6月にインドネシア人の家政婦が雇い主を殺害したとして斬首されたときは、インドネシアのユドヨノ大統領が演説でサウジを激しく非難し、サウジへの出稼ぎを禁止した。
死刑が適用される容疑も殺人、強姦のほか、背教など多岐にわたっており、2011年12月には「魔術を用いた」女性の斬首刑が執行された。
「サウジの大量処刑は、人権問題での不名誉な名声をさらに高めるだけだ」。国際人権監視団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東ディレクター、サラ・リー・ホイットソン氏はロイター通信に語った。2015年にサウジは158人を処刑している。これは1995年以降で最も多い数字だ。
■国連人権理事会では大きな影響力
一方で、サウジはアメリカやイギリスを含む世界主要国の支持を背景に、国連人権理事会で大きな影響力を持っている。
理事会の47カ国は世界を5地域に分けた上で、国連総会での秘密投票で選ばれる。任期は3年。サウジアラビアは2013年11月にアジア代表の1カ国として選出された。人権団体がサウジの選出を批判したが、中東諸国や、ウィキリークスによるとイギリスが支持したという。
さらにサウジアラビアは2015年夏、5カ国で構成する諮問委員会の一員となり、理事会を代表して人権状況を監視する専門家の選出などに関わることになった。
サウジを支持する国はその態度を変えていない。アメリカ国務省報道官は、国連の専門家会合へのサウジの関与を「歓迎する」と述べた。アメリカのサマンサ・パワー国連大使は、サウジの地位は「手続き上のもの」として、国連の人権問題への姿勢に大きな影響を与えないだろうとの見通しを示した。
しかし、サウジはすでに人権理事会で影響力を持ち始めている。2015年9月末、サウジは、イエメン内戦での人権侵害について、国際的に調査するというオランダの国連理事会決議案を断念させた。サウジはイエメン空爆の有志連合を主導しており、クーデターで政権を掌握した武装組織フーシと戦うイエメン軍や民兵を組織的に支援している。人権団体は、少年兵やクラスター爆弾の使用、多くの民間人が犠牲になっていることなどを指摘している。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳、加筆しました。
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