福岡県飯塚市議会で12月18日、市議会議員の資産報告を廃止する「資産公開制度を廃止に関する条例改正案」が提出され、賛成多数で可決された。経費がかかることや、市民の閲覧が少ないことなどが、廃止の理由だという。
政治家の資金公開制度とは?
議員や市長など政治家の資産公開制度は、当選時の資産を公開・報告するもの。政治家の汚職、口利きなどの不正行為を予防し、地位を利用した不正な蓄財などを監視することを目的としており、国会議員や地方自治体の首長らは、国会議員資産等公開法に基づいて、公開が義務付けられている。
一方で、地方自治体の議員らについては、政令市を除き、資産公開の法的義務はない。各自治体は、政治倫理条例を制定し、公職の試算を公開することが通例となっている。
資産公開法では本人名義の土地、定期預金、有価証券などが対象となっているが、普通預金が対象に入っていなかったり、名義が本人でなければ、その資産について公開する必要はないなど、抜け道も指摘されている。飯塚市では1986年、福岡県内で始めて政治倫理条例を制定。2007年に改正された改正された同条例は、報告義務者が本人に限られており、市政治倫理審査会は2008年以降、「配偶者や同居親族まで広げるべき」などと指摘していた。
改正案を出した理由は「経費の無駄」?
議案は、江口徹市議らによって議員提案された。西日本新聞によると、江口市議は提案理由について、「資産報告書を閲覧する市民があまりにも少ない。抜け道があり、市議の不正が見つかることもなく経費の無駄だ」と話した。
江口氏は提案理由について「資産公開については、200万円以上の経費がかかっている。また、閲覧者が極めて少ないことから、制度が形骸化していると判断した」と発言。試算報告の閲覧者について、2013〜2015年度は各1名づつ、2012年はゼロだったと説明した。
他の議員からは「閲覧者の数ではなく、提出を義務化していたことが、重要だったのではないか」などの意見が出た。また、改正案が17日という本会議の前日に提出され、この日の本会議でのみ議論が行われるかたちで決議が行われようとしていることにも批判の声があがった。
改正案に対する市民の意見は「聞いていない」
共産党の川上直喜議員は「政治権力を縛るルール、政治家の縛りを自ら取っ払うという動き」と表現し、「議員を監視するために重要な資産公開制度を、この際かなぐり捨てよう、廃止してしまようというものだ。監視される立場の者が、住民に相談せずにこのような議案を出すことがあるのか。議案について、市民の意見を聞いたか」と質問。江口氏は「市民の意見を聞いてはいない」と回答し、「市民の関心の表れは、閲覧制度に現れると考えている」と述べた。
また、この日の本会議のみで決議を行うことについて江口氏は、「特別委員会は傍聴者が10人に限定されている。本会議は議員全員が参加できる」などと答弁した。
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