靖国神社の爆発物、27歳の韓国人容疑者の報道は二転三転

「捜査関係者の話」として伝える情報は揺れ動いており、不可解な点が多い。

靖国神社に爆発物が仕掛けられた事件に関与した疑いで、警視庁に逮捕された27歳の韓国人容疑者。各メディアが「捜査関係者の話」として伝える情報は揺れ動いており、不可解な点が多い。12月11日時点で報じられた情報を整理した。

■動機、一転して否認

建造物侵入容疑で逮捕された全昶漢(チョン・チャンハン)容疑者は、11月21日に初めて日本を訪れていた。毎日新聞によると、東京都内のホテル2軒に1泊ずつ宿泊し、22日は靖国神社の境内をうろついていた様子が防犯カメラに写っていたという。23日午前の新嘗祭の直前にトイレで爆発音がした。23日午後に全容疑者は帰国している。

NHKによれば、全容疑者は「靖国神社に個人的な不満があった」という趣旨の供述をしたが、その後、容疑の否認に転じた。NHKなどによると、過去に日本への抗議活動などの経歴も確認されていない。

朝日新聞デジタルによると、事件直後に靖国神社のトイレから見つかったたばこの吸い殻と、全容疑者が滞在していたホテルの衣類から見つかったDNAの型が一致したが、全容疑者は「靖国神社に行っていない」と話しているという。

■突然の再入国。なぜ?

10日の報道では「日本の記者から質問を受け、靖国神社のトイレを確認しにきた」という趣旨の話をしていたという。

一方、11日になると、再入国時に「火薬のようなものや、時限発火装置の材料とみられるタイマーなどを持ち込んでいた」と11日に各メディアが一斉に報じた。NHKは「先月失敗したので、もう一度、爆発物を仕掛けようとした」という趣旨の供述もしていたと伝えている。

全容疑者は日帰りで帰国するための、帰りの航空券も予約していたと、各メディアが一斉に報じている。

■外交問題にも発展

産経ニュースは当初、日韓間で外交問題化することを恐れた韓国政府が「それとなく出国を促した」との見方を紹介し「再犯目的」で再入国した可能性は低いと報じた。

2002年に結ばれた「日韓犯罪人引き渡し条約」は、政治犯を対象外としている。靖国神社の門柱に放火した後、韓国の日本大使館に火焰瓶を投げつけて韓国で逮捕・起訴され服役していた中国人の男の身柄を、ソウル高裁は2013年1月、「靖国神社には政治的な象徴性がある」として日本に引き渡さないことを決定したことがあるからだ。

なお、韓国外交省の報道官は記者会見で、全容疑者との接触を否定している

一方で韓国外交省は、日本で全容疑者の顔や実名が報じられていることについて、日本政府に抗議した。事件報道の比重が小さい韓国では、女児殺害など凶悪事件以外で容疑者の実名や顔写真が報じられることは少ない。ただ、今回は日本メディアの報道を引用する形では韓国でも連日、大きく報じられており、「日本メディアの報道が韓日関係に響くことを事前に防ごうとする意図もある」と韓国の聯合ニュースは分析している。

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