アメリカの無人爆撃機(ドローン)の元操縦士・技術士らは11月19日、オバマ政権による中東での無人機爆撃の実態や、無数の民間人が犠牲になっていることの重い責任について語った。ニューヨークで開催された新作ドキュメンタリー動画「ドローン」のPRイベントで、ドローン爆撃計画に従事した元兵士らが、自らの体験を説明した。
ガーディアン紙によれば、マイケル・ハーズ氏はアメリカ空軍の元上級パイロットで、ミサイルを標的へ向けて操縦していた。軍職員の質は時間の経過と共に急激に低下しており、オバマ政権下での職員の考え方が、「ミサイルを撃ち込んだ結果は、周囲の状況のせいにするというものに変わった」と述べた。
ハーズ氏はジョージ・W・ブッシュとバラク・オバマ大統領政権の下で指導員としても活動。新しい生徒を訓練した時、生徒は標的の人々が「悪事を企んでいる」ように見えたから行動しただけだと答えたため、訓練飛行を終了させて生徒を座席から引きずりおろし、その生徒の飛行テストを落第させたこともあった。「これはテレビゲームじゃないんだ・・・人が死ねばそのままなんだよ」と生徒に伝えたが、上司からは生徒を押し留めたことを叱責された。
さらに、従事者らの間では、子供のことを「fun-size terrorists(“一口”サイズのテロリスト)」とか「tits(訓練中のテロリストを意味する"terrorists in training"の略で、女性のおっぱいを意味するスラング"tits"と掛けている)」などの非人道的な言葉で読んでいたと告白。「雑草は伸びすぎる前に刈れ」というモットーがあったとも話した。同氏によれば、このやりかたは「彼らから人間らしさを取り除くため」だったと述べている。操縦士の間では過度の飲酒は普通のことで、同氏は最終的には違法薬物を使用し始め、空軍から退役した後はコカイン中毒になった。
イギリスの非営利組織による調査報道では、オバマ政権下での5年のドローン爆撃によって2400人を超える死者が出たと概算されている。オバマ政権は、ドローン爆撃計画には厳重に監視されており、アメリカ人にとって「継続的で差し迫った脅威」を示す人間だけを標的にしていると強く主張している。しかしアメリカのニュースサイトが先月公開した文書には、その主張とは真っ向から食い違う実態が描かれている。アフガニスタンで2012年1月〜2013年2月の間に行われたある軍事行動では、アメリカの特殊作戦による35人を標的にした空爆で200人以上の死者を出したという。
ドローン爆撃賛成派に対するコメントを求められたハーズ氏は、「確かにドローンは、人を殺すという意味においては非常に有能です」と認めた。しかし彼は「ただし、これは議論の起こるポイントだと思いますが、ドローンは殺人には長けていますが、問題なのは標的を正しく絞りこむことがができないということなのです」と付け加えた。
シアン・ウェストモアランド氏は、アフガニスタンでのドローン爆撃計画用の通信インフラ整備に技術者として従事した。ガーディアン紙によれば、ウェストモアランド氏は過去に、彼自身が200人以上の"敵の殺害"に貢献したと称える報告書を受け取ったことがあるという。「それは戯言です。200人が全員"敵"だったわけではない」と彼は言う。自宅に帰還してからは子供たちの殺害に責任を負っていることで悪夢を見るようになり、精神科病棟に入院したことや、ホームレスにもなったこともあるとウェストモアランド氏は述べた。殺傷者数の記載された一枚の紙切れが「私の上に非常に重くのしかかってきた」のだった。
空軍のドローンの元操縦士であるブランドン・ブライアント氏も、このイベントでスピーチを行った。ブライアント氏は、戦闘員との確認が取れていない10人を含めた13人を殺害したと話した。さらにブライアント氏は、ドローンによる攻撃が、パリの同時テロの犯行を主張する「イスラム国」(IS)のような過激派グループの台頭を助長していると主張した。ブライアント氏は「軍の採用担当者は恐怖心を悪用している」とした上で「私たちがその悪用を可能にしているのです」と述べている。
「4人を殺すことで、新たな10人のテロリストを生み出している(のが今の状況)」と、ブライアント氏は続けた。「それが本当に私たちが望んでいることなのでしょうか」。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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