国際医療NGO「国境なき医師団」(MSF)は11月3日、アフガニスタンのクンドゥズの病院で10月に起きた爆撃についての内部報告書を公表し、爆撃が意図的なものではないというアメリカ政府の主張に改めて疑いを投げかけた。
報告書は、アメリカ主導の爆撃により30人が殺され、「患者がベッドの上で焼かれた」「医療スタッフが頭部を飛ばされたり足を失った」などと爆撃の惨状を記している。
MSFは、現場から逃げる際に殺された人もいたと発表した。
爆撃から数日が経ったクンドゥズにある国境なき医師団の病院内部
例えば、報告書は「ある車いすの患者は入院患者用の建物から逃げようとしていたのだが…爆薬の破片で亡くなった」と伝えた。
アメリカの爆撃機が、病院から逃げる医療関係者を狙って撃ったことも明らかにした。
「多くのスタッフが、爆撃機から人々が撃たれるところを目撃している。空爆を受けていた病院の本棟から逃げようとした時だった」と報告書は発表した。「逃げる人の動きを追うような攻撃があったとも伝えられている。(国境なき医師団の) 医者や医療スタッフは、敷地内の別の安全な建物に逃げる途中で撃たれた」。
報告はまだ途中だが、国境なき医師団の会長ジョアンヌ・リュー医師は疑惑をめぐり、事実を明らかにするために報告書を公表したと語った。
国境なき医師団のリュー会長は、MSFが爆撃を透明化するために報告書を公表したと語った。
「今回の空爆を行った軍の目に、病院が守られるべき立場を失ったと映ったのかと疑問が残る。もしそうだとしたら、いったいなぜなのか」と報告書は記した。「その答えは国境なき医師団の病院にはわからない。空爆を要求、命令、承認する責任のある側にしか答えはない」。
「戦争地帯の医者を空爆で罰してはいけません」と、国境なき医師団ゼネラル・ディレクターのクリストファー・ストークスは追記した。
MSF
MSFによると、病院は空爆の夜「完全に機能」している状態で、100人以上の患者の治療をしていた。報告書によると、医療施設は2011年に開設され、その地域唯一の施設でこれまでに1万5000件以上の手術をしてきた。また、「空爆の夜、発電機から完全に電力が供給された街でいくつかの建物の一つだった」。
病院は通常、国際紛争法に守られている。国境なき医師団は クンドゥズの施設を病院として見なすよう求めていた。MSFによると、空爆前夜は「MSFの2つの旗が病院の屋上にあり、もう一つも外傷センターの入り口にも掲げられていた」。
以前から、MSFはクンドゥズにいる軍に位置を伝えていた。空爆の数日前、その地域では武力衝突が過熱していたため、MSFの職員は、念のためアメリカ軍とアフガニスタン軍の指揮官に位置情報を伝えていた、とも報告書は明かした。
「事実は、病院の内部を見ればわかります」とストークスは語った。「私たちの見解では、戦争の基本的なルールを見直すことが必要です」。
空爆による爆発が10月3日の真夜中、アフガニスタン北西部の都市を揺らした。その地域でアメリカ軍が行った5日間の空爆の中で、12回目のものだった。
1時間続いた空爆の間、病院のスタッフは18回の緊急信号を出し、さらにアメリカとアフガニスタンの軍当局にメールで連絡をした。
報告書は、この連絡の様子を時系列で記している。午前2時19分、MSFは空爆が始まったことをアフガニスタン駐在のアメリカ軍当局に初めて連絡した。報告書によれば、2時52分まで返信が来なかった。
「申し訳ありませんが、何が起きたのかまだわかりません」と、アメリカ当局が返信をよこした。
2時59分、MSFが空爆によって「重大な人的被害」が出たようだとアメリカ当局に伝えた後、メールで次のような返信がきた。「できるだけのことはやります、祈っています」。
10月16日、クンドゥズでアメリカの空爆にあった国境なき医師団の病院の残骸
3日の報告書について、アメリカ国防総省は再び空爆について謝罪 し、犠牲者とその家族に哀悼の意を表した。また継続中の調査に全面的に協力し、犠牲者の家族の見舞金と病院の修復費用を支払うと誓った。
「今回の悲劇から、MSFと密接に連携し、事実を究明します。昨日は、ジョン・キャンベル司令官がMSFの代表と個人的に会ったばかりです」と、国防総省の報道官が声明を述べた。「引き続きMSFと密に連携し、殺害された方とケガをされた方を含めて被害に遭った方々を特定し、調査を終えて見舞金の支払いなど次の行動につなげていきたいと考えています。また、MSFに全面的に協力し、病院が受けた損害の程度をしっかり判断し、完全に修復します」。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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