イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は10月20日、首都エルサレムで行われた会議でパレスチナ人がドイツの独裁者ヒトラーにホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を進言した、と発言した。
ネタニヤフ首相は20日の「世界シオニスト会議」で、ヒトラーはユダヤ人をヨーロッパから「追放」することだけが目的で、ユダヤ人をホロコーストで「絶滅」させるというアイデアはパレスチナ人のイスラム教指導者で、エルサレムの大ムフティー(法学者)だったハジ・アミン・アル・フセイニ師のものだったと発言した。
「歴史の歪曲」といった批判が国際的に巻き起こり、波紋は今も広がっている。22日には、ネタニヤフ首相が批判の矛先をパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長へと向けようとしている。
イスラエルの新聞「ハアレツ」のバラク・ラビド記者は、21日のネタニヤフ首相とドイツのアンゲラ・メルケル首相の共同記者会見で、ネタニヤフ首相の発言について質問した。ラビド記者はメルケル首相に、ホロコーストが「政争の具」に使われていることをどう思うかと尋ねた。また、ラビド記者はネタニヤフ首相に、「20日の挑発的な発言を踏まえると、アッバス議長を『扇動者』と非難した演説はやや偽善的ではないか」と質問し、ネタニヤフ首相自身が扇動的ではないかと疑問を呈した。
イスラエルのネタニヤフ首相(左)とドイツのメルケル首相
「ヒトラーにはホロコーストの責任があった」とネタニヤフ首相は答えた。「それは誰も否定すべきではないと思う。しかし、エルサレムのムフティーについて重要な証言がある。彼はナチスに、ユダヤ人がヨーロッパに逃亡するのを阻止することを進言し、『最終手段』を提案した」。
「疑問は私にではなく、アッバス議長に向けるべきだ」とネタニヤフ首相は続けた。「なぜ彼やパレスチナ自治政府がフセイニ師をパレスチナ人の偉人として美化するのか。彼らはフセイニ師のことをパレスチナ国家の父と呼んでいる。この人物は戦争犯罪者だ。フセイニ師はナチス協力者なのに、未だにパレスチナの教科書で美化されている」
対照的にメルケル首相は単刀直入に答えた。「私たちは、自らの歴史観を変えるいかなる理由も存在しない。私たちはドイツ国家として、ホロコーストに対する責任を全うする」
イスラエルとパレスチナ人の緊張は急速に高まっている。エルサレムの聖地をめぐる対立をきっかけに、10月に入ってパレスチナ人がイスラエル人を襲撃する事件が多発し、18日にはパレスチナ人の男が銃を乱射し、12人が死傷する事件が発生している。一連の衝突で、これまでパレスチナ人47人、イスラエル人10人が死亡しており、1987年、2000年に続く第三次インティファーダ(パレスチナ人の民衆蜂起)へと発展するのではないかと懸念されている。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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