ノーベル物理学賞を受賞した東京大宇宙線研究所長の梶田隆章(かじた・たかあき)さんが10月6日夜、東京大本郷キャンパスで記者会見を開いた。梶田さんは「頭が真っ白な状態で、何を話していいのかわからない状況」など戸惑いを見せながらも、「研究者個人の好奇心でやっている分野。そのような純粋科学にスポットを当てていただいたことを嬉しく思う」などと述べ、喜びを噛み締めた。
梶田さんは、埼玉大学を卒業後に東大大学院に進み、そこで出会った小柴昌俊・名誉教授(2002年ノーベル物理学賞)や戸塚洋二・東京大特別栄誉教授(故人)のもとで宇宙線研究に従事。物質を構成する基本粒子の一つである「ニュートリノ」に質量があることを裏付ける「ニュートリノ振動」という現象を世界で初めて捉えた。
研究をすすめるきっかけとなったのは、ニュートリノの正体をつかむために1980年代につくられた巨大な観測施設「カミオカンデ」で得たデータの計算が、自身の予測とは異なる結果になったことだった。それまで別の研究のためにカミオカンデのデータを利用していたが、計算結果の違いに「何かあるんじゃないか」と感じてニュートリノの研究を真剣に始めたという。「最初におかしいと思った瞬間を見逃さずに来れた」と、梶田さんは話した。
しかし、このときから1998年にニュートリノの質量について発表するまで、約10年の期間があった。「きちんと(研究を)やっていけば、何かに結びつくんじゃないかと思ってきちんとやった。自分の進んでいる道が正しいと思って頑張った」などとコツコツ研究を続けたことを明かした。
しかし、研究の成果は決して自分だけのものではないと、梶田さんは言う。「ニュートリノ研究というのは、一人でできるようなものではなく、スーパーカミオカンデですと100人を超えるチームが一つの目標に向かって共同で研究をして、成果を出していくというようなプロジェクト。ノーベル賞には、私の名前を出してはいただきましたが、スーパーカミオカンデ、そしてカミオカンデの研究グループが認められたということだと思う」として、グループ全体の栄誉だとの考えを示した。
梶田さんはニュートリノの研究について、「何かがすぐに役立つものではなくて、人類の知の地平線を拡大するような研究を、研究者個人の好奇心に従ってやっている分野」だと話す。未知なる世界の探求を続けることについて、梶田さんは次のように述べた。
「われわれの住む宇宙というのは、まだまだわからないことがたくさんあります。大きい問題は、1日や2日の短い研究では解決できるものではなく、たくさんの人が興味を持って長い年月をかけて解き明かしていくというもの。そのような宇宙の謎解きに、若い人たちに是非参加していただきたい」。
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