見直し前のデザインを手がけたザハ・ハディド氏が、新たな新国立競技場のコンペ参加を断念――。ザハ・ハディド氏の事務所「ザハ・ハディド・アーキテクツ」(ZHA)がハフポスト日本版に9月17日、送付したコメントで明らかになった。
コメントでは設計・施工を一体として募集する今のコンペのルールについて、「参加を望んでいる多くの建築家を制限している」と批判。「スタジアムを建設できる施工業者が限られ、我々のデザインチームには、公募の参加機会は閉ざされるだろう」とし、事実上、断念する意向を明らかにしている。
ZHAは7日に日建設計と共同でコンペに応募する方針を発表していたが、公募の締め切りの18日までに、施工を担当するゼネコンが見つけられなかったことをコメントで示唆している。
新国立競技場の建設には、技術やリソースの点からゼネコン最大手5社しか事実上、不可能と多くの建設業界の関係者は指摘している。このうち大成建設は梓設計、建築家の隈研吾氏とチームを組み、竹中工務店、清水建設、大林組が共同で、建築家の伊東豊雄氏と組むとみられている。
白紙撤回された計画で、大成建設と竹中工務店は主要な役割を占めており、資材や人員をあらかじめ確保しているため、新計画においても主にコスト面で有利。ZHAと日建設計のチームにとっては、旧計画に関わっていたゼネコンと組めなかったことが痛手になったようだ。
以下、ZHAがハフポスト日本版に寄せたコメントの全訳を掲載する。
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ザハ・ハディド・アーキテクツは日建設計とともに、新たな要件と予算に合う新国立競技場のデザインに取り組んできました。これまでの2年間の設計作業を通じて、最もコスト効果が高く、日本の人々にとって質の高いスタジアムを提供でき、2020年のオリンピックまでに数世代にわたって、日本のスポーツの中心となるものを建設できます。
新しいコンペのルールは我々のデザインチームや他の建築家にとって非常に厳しいもので、施工会社と組まなければ参加ができません。さらに、スタジアムを建築できるのは限られた施工会社しかなく、我々のチームや多くの建築家、建設会社には参加の道が閉ざされています。
こういった制約は、施工会社間の競争がなくなり、建設費を押し上げ、工期を大幅に遅らせ、プロジェクトを再び危険に晒します。また、限られた工期と、限られた施工会社の中から決めるため、間に合わせのデザインで、質の悪いスタジアムになるでしょう。これでは、コストも想定を超え、納期までに完成せず、オリンピックが終わった後、長期間にわたって利用できないものになってしまいます。
デザインチームは、施工業者や、日本政府、東京都とともに、国立競技場の新しいデザインに取り組む準備ができています。新しいデザインでも、最高の品質で金額に見合う価値のあるスタジアムになるはずです。2020年の東京オリンピックですべての選手や観客を迎えるにふさわしく、今後50〜100年にわたって国内・海外の大規模なイベントから、地域レベルの小規模なイベントまで、あらゆるニーズにあったスタジアムとなるでしょう。
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