食べきれなかった料理を街の人とシェア。スペインの「連帯冷蔵庫」とは?

食べ物がなくて困っている人に、余った料理を気軽にお裾分けできる「街の冷蔵庫」がスペインにある。

スペイン北東部・バスク州のガルダカオに、2015年5月に「連帯冷蔵庫」という名前の公共の冷蔵庫が設置された。自宅やレストランで余った料理や、使わなかった食材を入れる冷蔵庫で、食品廃棄を減らすと同時に、必要とする人に食べ物を届けることができる。

アメリカの公共ラジオNPRによると、この冷蔵庫は、ガルダカオの貧困層の住民向けのフードバンクを運営していたアルバロ・サイス氏のアイデアで取り入れられたという。

きっかけとなったのは、ドイツの「フードシェアリング」だ。フードシェアリングは不要になった食品や残り物を個人でやりとりするインターネットシステムで、この支援システムを取りあげた記事を読んだサイス氏は、自分の町でも何か似たような支援を始めたいと考え「連帯冷蔵庫」を思いついたのだ。冷蔵庫であれば、インターネットがない人でも利用することができる。

サイス氏から相談を受けたイボン・ウリベ町長もサイス氏の活動への支援を惜しまず、冷蔵庫のほかに、電気代やメンテナンス代、衛生安全調査などの費用として、約5500ドル(約68万円)の予算を承認したとNPRは伝えている。

さらに、連帯冷蔵庫で保存されていた食品を食べて食中毒が発生した場合でも、プロジェクト関係者が責任を問われることのないよう特別の取り決めを設けた。

冷蔵庫を利用するためのいくつかのルールもある。ガーディアン紙によると、生の肉や魚、卵を入れることは許可されていない。また、自家製の食品は、すべて調理した日付を記載したラベルを貼らなければならない。さらに、ボランティアの人たちが定期的に冷蔵庫を訪れて、賞味期限が切れているものが入っていないかチェックする。

サイス氏は、6月末までに推定200~300キロの食品が、共有冷蔵庫のおかげで廃棄されずに済んだとガーディアン紙に話している。現在、この数字はもっと増えているはずだ。

食料廃棄の問題に対しては、世界中で様々な取り組みが行われている。

アメリカではカリフォルニア大学デービス校の学生3人が、2014年に自宅の前庭に地域共有の冷蔵庫を設置した。しかし食品の安全上の懸念から郡の保健当局がプロジェクトを中止させたと、サクラメント・ビー紙が報じている。

フランスでは、2015年5月に大手スーパーマーケットがまだ食べられる食品を廃棄処分することを禁じる法律が可決され、スーパーマーケットは余った食品を慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や肥料に転用することが義務づけられた。

イギリスでは、大手スーパーマーケットチェーンの「テスコ」が、売れ残り食品を複数の非営利団体に寄付する活動を始めた。さらに、形が悪い果物や野菜を捨てずに活用する動きも世界規模で広がっている

それでも、深刻な食品廃棄問題を改善するためにはさらなる努力が必要だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界で毎年廃棄される食品は13億トンで、世界で生産される食品の3分の1を占める。

廃棄された食品は、腐敗すると気候変動の原因の一つである有害な温室効果ガス、メタンガスを放出する。「連帯冷蔵庫」は地域レベルで取り組みかもしれないが、このアイデアは広がっており、7月にはスペイン南東部の都市ムルシアにも2つ目の共有冷蔵庫が設置された。また、サイス氏のもとには、世界中から問い合わせが寄せられているという。「連帯冷蔵庫」は小さな取り組みでも、気候変動問題という世界規模の問題に貢献できることを示す一例かもしれない。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

[日本語版:湯本牧子/ガリレオ]

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