日経新聞がフィナンシャル・タイムズ買収 1600億円
日本経済新聞社は23日、英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を発行するFTグループを、教育事業や出版を手がける英ピアソンから8億4400万ポンド(約1600億円)で買収することで合意した、と発表した。国内メディアによる海外企業の買収で過去最大規模になるという。
買収するのは、FT紙のほか、雑誌、ウェブサービスなど。ピアソンが持つFTの本社ビルや英経済誌「エコノミスト」グループの株は含まないという。
老舗経済紙のFTは、世界のビジネス界で強い影響力を持つ。近年は新聞紙面だけでなく、デジタルでの発信にも力を入れてきた。日経も特にアジアでの国際的な情報発信に注力。経済ニュースや解説といった情報で両社の顧客基盤を生かし、グローバルな情報発信力を高める狙いだとみられる。今後、日経とFTは記者や編集者の人的交流を拡大するという。
日経とFTはこれまで、互いの記事を翻訳して紙面やウェブサイトに掲載するなど関係を深めてきた。日経の喜多恒雄会長は「FTという世界で最も栄えある報道機関をパートナーに迎えることを誇りに思う。我々は報道の使命を共有しており、世界経済の発展に貢献していきたい」とコメントした。
ピアソンはFTを1957年に傘下に収めていた。ロイター通信などによると、英語の能力試験や参考書の出版などを手がけるピアソンは、メディア部門より教育事業に注力していく考えだという。
ピアソンのジョン・ファロン最高経営責任者(CEO)は「メディアの変革期において、FTの価値を最も高める道は世界的なデジタル企業と統合することであり、日経の下でさらに繁栄すると信じている」とのコメントを発表した。
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〈英フィナンシャル・タイムズ〉 1888年創刊。本社・ロンドン。経済・ビジネス専門メディアとして世界的に影響力を持つ。紙面と電子版を合わせた発行部数は73万7千部で、うち7割の約50万人が電子版の購読者。紙面は欧州だけでなく米国やアジア、日本でも発行している。2014年のグループの売上高は約644億円。
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〈日本経済新聞〉 本社・東京都千代田区。1876年、三井物産系の中外物価新報として創刊。複数の経済紙の買収を経て、1946年に日本経済新聞に改称した。販売部数は朝刊が273万部、夕刊が138万部(2014年12月)。2010年に電子版を創刊し、有料会員は約43万人いる。14年12月期の売上高は3006億円。
日経新聞、世界相手にデジタル戦略加速か 英FT買収
日本経済新聞社が英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収するのは、国内の新聞市場が人口減少に伴い縮んでいるからだ。今後、アジアを中心に国際的なデジタル戦略を加速させるとみられる。日本語という壁が作り出す狭い市場の中でシェア争いをしてきた同業他社は、衝撃を受けている。
FTは世界のビジネス界で強固な地位を築く。近年はデジタル発信に力を入れている。親会社の英ピアソンによると、過去5年で紙媒体と合わせた購読数は30%増の73万7千部。その7割がデジタルだという。
FTのデジタル紙面は、世界のメディアの中でも数少ない成功モデルとされている。最大限の情報量を得ようとすると、デジタル版だけでも年間約5万8千円と高額だ。それでも特ダネや出来事の背景説明、有力記者のブログ、コラムニストの解説などを通じて、内幕を描く記事が世界のビジネスリーダーや当局者に支持されている。
日経は、FTの翻訳記事を電子版に毎日掲載したり、記者を派遣したりするなど、以前から関係が深い。
FT親会社のピアソンとは、ビジネス英語と時事英語を学べるオンライン英語学習プログラムを共同開発もしている。企業が社員研修に導入する教材に日経やFTの記事をつかった教材を追加するなどビジネス面での連携を深めていた。
(朝日新聞デジタル 2015年7月24日01時15分)