「明治日本の産業革命遺産」が7月5日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録されるまでは、第2次大戦期に朝鮮人が強制徴用された事実が記載されていないとして韓国政府が反発し、半年にわたって外交の場で主張を展開した。当初予定されていた審議が1日先送りされるという異例の展開をたどった。
韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は「韓国の正当な憂慮が忠実に反映される形で決定した」とのコメントを発表、日本側が「本人の意に反して」労働を強いられたと述べ、こうした歴史の記憶に適切に対応するとした日本側の対応を評価した。
韓国メディアは、日本が「朝鮮人の強制動員」を事実上認めたと、おおむね韓国側の対応を評価している。
韓国の大手全国紙、中央日報は「韓国側が序盤は日本の先制攻撃にあわてたが、『逆転判定勝ち』を収めた」とした。韓国政府や国会議員による世界遺産委員国への「全方位外交」を展開したことが奏功したと報じている。
朴槿恵大統領は4月、中南米歴訪の際、委員国のコロンビア、ペルーの大統領と会談し、5月には訪韓したインド首相と会談、韓国側の主張を詳細に説明した。最近では(日韓を除く)19委員国にすべて親書を送った。尹炳世外相が6月、世界遺産委員会議長国のドイツを訪問し外相と会談、マレーシア外相に会いにニューヨークまで行った。政府当局者は、委員国の人と会うときは、強制徴用の写真や証言録なども使った。当時「こんな歴史的事実があったとはまったく知らなかった」という反応を見せる人が多かったという。
(中央日報より 2015/07/06 01:42)
日本は世界遺産委員会の委員国としての任期が2015年11月で切れるのに対し、韓国は2017年まで残っている。韓国の全国紙最大手の朝鮮日報は、「強制労働」の表現を最後まで拒否した日本が「登録延期」という国際社会の圧力に屈したと伝えた。
日本側は「強制労働」の表現が入ると、請求権問題で新たな火種となることを恐れ、韓国側に継続的に修正を求めていた。しかし国際社会で「韓国が世界遺産登録に反対しない代わりに、『全体の歴史』(full history)を反映させるべきだ」という意見が広がり、日本も方針を変えなければならない状況になった。特に議長国ドイツが「日本の登録は来年に延期することもできる」と強く圧力をかけたことが「決定的」だった。
(朝鮮日報より 2015/07/06 03:00)
韓国の中堅全国紙、ハンギョレは、日本の発言が公式な決定文に含まれなかったことについて、以下のように論評した。
惜しい部分も残る。朝鮮人の強制動員の事実を認めた日本政府の発言は、世界遺産委員会が公式に発表する「決定文」に含まれないからだ。その代わり、韓日両国は、決定文の本文に注釈で「世界遺産委員会は日本の発言に注目する」という内容を付記することで合意した。韓国が国際舞台で日本政府が強制動員の問題を事実上認める発言を引き出す「実利」を引き出したのに比べ、日本はこうした発言内容を決定文にできるだけ消極的に表記する「名文」を得た格好だ。
(ハンギョレより 2015/07/05 23:52)
「明治日本の産業革命遺産」を巡っては、23施設のうち7施設で、朝鮮人労働者の強制徴用があったとして、韓国側が反対していた。日本側は対象期限を「1850―1910年」と、日韓併合の前の時期に限定することで、韓国側の主張はあたらないと反論していたが、2015年6月の日韓外相会談で、日韓で登録に協力することで合意していた。
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