アメリカのオバマ大統領は6月24日、過激派組織「IS(イスラム国)」などのテロ組織に誘拐された人質の家族が、身代金を支払うことを容認する新たな方針を発表した。アメリカ政府はこれまで、身代金がテロ組織の資金源となる恐れがあるとして、政府だけでなく家族が支払うことも認めていなかった。
方向転換のきっかけとなったのは、2014年にISに拘束され、殺害されたジェームズ・フォーリーの事件だった。ABCニュースによると、フォーリー氏の家族はインターネット上で身代金のカンパを集めていたが、アメリカ政府が「(身代金を支払えば)訴追すると言われた」として、身代金の支払いを許さなかったという。
この対応について、国家安全保障会議(NSC)の担当者は「法律はテロリズムなどへの身代金の支払いを明確に禁じている」とコメント。「(身代金を払うことは)さらに多くのアメリカ人が、誘拐される危険を高めるだけだ」と述べた。
この方針に対し、「人質を見捨てるのか」などと政府への批判が高まり、オバマ大統領は見直しを指示。新たな方針では、政府による身代金の支払い拒否など、テロ組織に譲歩しない原則は堅持するものの、家族が身代金を支払っても、刑事訴追しないことが明示された。政府が犯行組織と、人質の解放に向けて交渉を行うことも盛り込まれた。
■日本への影響は?
アメリカ政府の方針転換は、日本などの同盟国を含めた他の国にも影響を与える可能性がある。2015年1月、ISは日本人ジャーナリストの後藤健二さんと民間軍事会社社長の湯川遥菜さんを拘束した際、身代金2億ドル(約248億円)を要求したが日本政府は拒否。この時もアメリカ政府は日本政府に対して、「身代金の支払いはかえって人々を危険にさらすというのがアメリカの考えだ」として、各国の政府や企業に対して、身代金を支払わないよう求めていた。
アメリカ政府の方向転換を受け、菅義偉官房長官は25日、「アメリカはテロ組織に対し、いかなる譲歩もしないとの政策を改めて確認している」として、日本への影響は無いとコメント。国連の安全保障理事会が、テロリスト組織が活動資金調達のために行う身代金目的の誘拐に際して、加盟国に身代金支払いに応じないよう求める決議を採択していることにも触れ、アメリカの方針転換が各国に及ぼす影響については「ない」と述べた。
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