宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月9日、火星の衛星に着陸して、砂や氷などを採取して地球に持ち帰る無人探査機を2021年度をめどに打ち上げる計画を明らかにした。政府の宇宙政策委員会の小委員会で説明し、大筋で了承を得たという。産経ニュースなどが報じた。
朝日新聞デジタルによると、小惑星探査機「はやぶさ」や、2019年度に打ち上げ予定の月面着陸探査機の経験を活かすことで、技術的に可能だとが判断したという。火星の歴史や太陽系の成り立ちの解明につなげるほか、将来の月や火星の有人探査に向けて技術を向上させる狙いがある。
宇宙政策委で正式に認められれば、文部科学省は2016年度の概算要求に関連予算を盛り込み、JAXAが開発に着手する。総開発費は約300億円になる見込みだ。
JAXAの前身となる宇宙科学研究所 (ISAS) は、日本初の火星探査機「のぞみ」を1998年に打ち上げたが、火星周回軌道への投入には失敗した。衛星探査が実現すれば、約20年ぶりのリベンジとなりそうだ。
■ロシアの探査機は、打ち上げ失敗
火星の衛星はフォボスとダイモスの2つあるが、どちらに着陸するかは未定だ。フォボスとダイモスは、球形ではなくジャガイモのような凸凹した形をしている。長径はフォボスが約27km、ダイモスが約16km。JR東京〜横浜間(32km)よりも短い。
火星の衛星「フォボス」(左)とダイモス(右)
フォボスとダイモスの起源は不明。もともと小惑星だったが火星の引力で捕獲されて衛星になったという説と、小惑星が火星に衝突してできたという説がある。探査機が岩石や砂を持ち帰って調べれば、どちらが正しいか決着をつけられる。火星の誕生時の様子や、火星にかつて大量にあった水がなくなった理由の解明にもつながると期待される。
火星の衛星から岩石や砂を持ち帰る計画は、実現すれば世界で初めてとなるが、これまではロシアが先行していた。ロシアは2011年11月、フォボスから表土を採取し地球に持ち帰る探査機「フォボス・グルント」を打ち上げた。しかし、打ち上げ後間もなくソフトウェアが原因と見られる問題で地球の軌道から脱出できなくなり、2012年1月に地球の大気圏に再突入している。
ロシアは、後継機を2020年に打ち上げることを目標にしており、日本のライバルとなりそうだ。
■スライドショー「美しい火星の地形」
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