「狂犬病ワクチン接種をやめましょう」という人をリアルに見て驚いた――。そんなツイートが5月13日に投稿され、話題になっている。13日午後3時時点では4900リツイートを超えた。
日本でワクチン接種は行うべきか。専門家は日本でのワクチン接種率の低さを挙げ、「日本は常に(狂犬病)侵入の脅威にさらされている」と警鐘を鳴らす。
厚生労働省によると、狂犬病は人を含むすべての哺乳類が感染する病気。人であれば、感染後にワクチンを接種することで発症を防げるが、発症してしまうと治療法はなく、けいれんや呼吸困難、まひなどを引き起こしてほぼ100%死亡する。かまれるだけではなく、傷口をなめられるだけでも感染する。
日本では1950年に「狂犬病予防法」が制定され、飼い犬の登録と狂犬病予防注射が義務化された。違反した場合、20万円以下の罰金が科されるが、近年は注射率の低迷が続いており、2013年度は登録頭数の72.6%しか、接種が行われていなかった。朝日新聞デジタルによると、登録していない犬も多いとみられ、実際は4割程度しか予防接種を受けていないとの推計もある。
3月30日付の秋田魁新報の記事によると、飼い犬の登録が毎年必要だった頃は、登録とワクチン接種を一緒に済ませていた飼い主が多かったが、1995年の狂犬病予防法改正で犬の登録義務が毎年から生涯1回に変わったことで、接種実施率が下落したとされる。
前日本獣医師会長で倉吉動物医療センター会長の山根義久さんは朝日新聞のインタビューに対し、「7割以上が予防接種をしなければ、予防の効果は期待できないと言われる」と話した。しかし、予防接種にはアレルギーによるショックという副作用もあることから、「予防注射の前後には激しい運動は避け、健康状態に変化がないかよく確認してください。特に持病持ちの犬や老犬は、かかりつけの動物病院で健康状態を確認してから打ったほうがいい」と述べた。
毎日新聞によると、「日本も島国だから狂犬病は流行しない」と油断するのは間違いだという。日本と同様、50年以上、狂犬病が発生していなかった台湾では2013年に野生動物の間で狂犬病の流行が確認された。2014年7月7日までに、台湾国内の広大な地域にわたって、イタチアナグマ389頭のほか、ジャコウネズミ1頭、犬1頭に狂犬病の発生が確認された。ウイルスの遺伝子情報から、何十年も前から、台湾の野生動物の間で、流行があったことが示唆された。
日本国内では1956年以降、人の狂犬病発症がなく、動物では1957年の猫が最後。しかし、2006年にフィリピンで犬にかまれ、帰国後に死亡した輸入感染事例がある。世界では年間約5万5000人が死亡しているという。
狂犬病清浄地域とされてきた台湾で野生動物の間に狂犬病が見つかったのは、政府や関係機関による野生動物も対象とした狂犬病の検査が継続的かつ体系的に実施されてきたことによるという。この問題を踏まえて、日本の厚生労働省と国立感染症研究所が2014年8月、国内の野生動物を対象に感染の有無を調べる初の全国調査を開始。同様の事態がないかどうか確認中だ。
厚生労働省はこの他にも、ロシア船などからの不法上陸犬対策などを行い、水際での狂犬病対策に努めているが、旅行医学に詳しい内科医の久住英二さんは、「狂犬病に感染した動物の国内の侵入は、いつ起きてもおかしくない」と指摘する。犬、猫、きつね、あらいぐまなどは輸入にあたって検閲が行われるが、ハムスターなどの小動物は届け出だけで済むのだという。国立感染症研究所によると、極めて稀ではあるが2002年にボリビアで、ペルー産のペット用ハムスターが狂犬病を発症した事例がある。
ペット保険大手「アニコムホールディングス」の獣医師、小川篤志さんは毎日新聞に対し、「国内で犬にかまれたからといって過剰反応する必要はないが、狂犬病はいつ日本に入ってきてもおかしくないんだという心構えで、一人一人が対策をしていかなければいけない」と話した。
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