駐韓アメリカ大使のマーク・リッパート氏が3月5日、ソウルでの朝食会で暴漢に切りつけられた事件の背景には、対立する意見を封じ込めようとする勢力がはびこる社会の雰囲気のほか、反米、反日感情の高まり、容疑者の反体制的な志向なども報道されている。
■韓国社会にはびこる「対立意見封じ込め」の雰囲気
韓国社会ではここ数年、保守や進歩(革新)、政治権力や在野勢力を問わず、「対立する意見を力で封じ込める」ことを狙った動きが顕著になっている。ハフィントンポスト韓国版のスプラッシュ(トップ画面)に取り上げられた出来事を紹介する。
■アメリカ国務次官の「日本寄り」発言に反発?
駐韓アメリカ大使が狙われた背景には、2月27日にアメリカのシャーマン国務次官が発言した内容が、韓国で批判を浴びていたことも指摘されている。
米国のシャーマン国務次官は27日、戦後70年の節目についてワシントンで講演し、「ナショナリスト的な感覚で敵をけなすことは、国の指導者にとって安っぽい称賛を浴びる容易な方法だが、それは感覚がまひするだけで、進歩は生まない」と語り、日中韓の指導者に自制を求めた。
(「敵けなしても進歩ない」 米高官、日中韓に自制求める:朝日新聞デジタルより 2015/02/28 23:51)
この発言が韓国内で「日本寄り」と批判を浴び、アメリカ大使館前で抗議デモが起きるなどの騒ぎが起きていた。全国紙最大手の朝鮮日報は3月3日付の社説で「日本に対しては謝罪や反省を促す言葉を一言も言わなかった」「不適切この上ない表現を躊躇せず使った」と激しく批判した。
■親北朝鮮、反体制が契機に?
キム・ギジョン容疑者は、2日から始まった米韓合同軍事演習に反対するなどの動機を、警察当局に供述しているという。朝日新聞デジタルは「韓国警察当局によると」として、キム容疑者が1999〜2007年に7回、北朝鮮を訪問したと伝えている。一方で6日に裁判所で被疑者尋問を受けたキム容疑者は、報道陣から北朝鮮との関係性を問われ「とんでもない」と否定した。
キム容疑者は、韓国で1982年からある民間の文化団体の代表を30年近く務めていた。当時の新聞などによると、主に学生に韓国の伝統民俗芸能を教え、公演するなどの活動をしていたが、1987年に民主化運動が激化した前後には、公演を警察当局に妨害されるなど、しばしば対立を繰り返していたという。
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