埼玉県所沢市で2月15日、小中学校の教室にエアコンを設置することの賛否を問う全国的にも異例の住民投票が実施された。
即日開票の結果、「エアコン設置」に賛成が5万6921票で、反対の3万47票を上回った。しかし、投票率は31.54%にとどまり、市条例で結果を重視することを定めた「多数票が投票資格者の3分の1以上」という条件には届かなかった。
■自衛隊基地の騒音で窓を閉め切った学校
この住民投票は、航空自衛隊入間基地の自衛隊機の騒音のために窓を閉めきる学校の暑さ対策として、基地周辺の小中学校にエアコンを設置するかどうかの是非を問うもの。所沢市は騒音対策を施した「防音校舎」29校へのエアコン整備計画を2006年に決めた。
09年には宮前小学校での冷房工事が終了したが、11年就任の藤本正人市長が「東日本大震災を経験し、私たちは便利さや快適さから転換すべきだ」などとして方針を撤回。住民側が反発して、14年11月に、約8400人の署名を添えて住民投票条例制定を市に直接請求した結果、住民投票が実施されることになった。
産経ニュースによると、住民側は「ぜいたくを求めるのではなく、夏場に航空機騒音で勉強に集中できない子供たちの学習環境を守ることだ」と指摘。窓を閉めたまま授業を受ける特殊性を考慮し、エアコン設置に理解を求めた。
これに対し、藤本市長は冷暖房設備に伴う市負担を約30億円と試算し、財政負担への懸念を表明。「クーラーの設置よりやるべきことがある。防音校舎以外の18小中学校に不公平だ」と設置反対を訴えていた。
住民投票の結果に法的な拘束力はないが、市の住民投票条例では賛成、反対のいずれかが過半数となり、有権者の3分の1に達した場合は、「結果の重みをしん酌しなければならない」としていた。
■注目される市長の判断
NHKニュースによると、藤本市長は開票結果を受けて「結果についてはこれから分析を行うが、これまで国内の自治体で実施した住民投票と比べると、決して高くない投票率だったのが残念です」とコメントを出したという。
藤本市長は16日午後、記者会見を開いてエアコン設置について意見を表明する予定。市条例の規定には届かなかったが、投票者の約6割がエアコン設置を望んだ民意を受けて、どのような判断を示すのか注目される。
■エアコン設置は地域によってバラバラ
なお文部科学省の調査によると、2014年4月1日現在で全国の小中学校の普通教室と特別教室を合わせたエアコン設置率は、29.9%。地域によってバラつきがあり東京都が全国最高の81.3%なのに対して、埼玉県は38.2%と大きな差がついている。
【UPDATE】FNNニュースによると、藤本市長は16日午後の会見で「財政配分なども考慮しながら、これから慎重に対応していく」と述べるにとどまった。(2015/02/16 15:57)
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