ジェームズ・ロバートソンさんは会社まで往復74kmの道のりを毎日8時間かけて往復する。そのうち34kmは徒歩だ。
地元紙「デトロイト・フリープレス」によると、56歳のロバートソンさんは、ミシガン州ロチェスターにあるプラスチック製部品の製造会社「シャイン・モールド&エンジニアリング」社で射出成形(プラスチックの成形加工法の一つ)を担当している。家はデトロイトにある。1988年型のホンダ・アコードが壊れてから10年ほど、利用できる公共交通機関がほとんどない。たまに知り合いの車に同乗させてもらうこともあるが、普段は自分の2本の足だけが頼りだ。時給10ドル55セント(約1200円)の身では車を買って乗り続けることもままならず、一緒に暮らしている女性が親から継いだ家に住んでいるので、引っ越しも考えたことがない。
「デトロイト・フリープレス」によると、ロバートソンさんが家を出るのは朝の8時、午後2時からの勤務交代に間に合わせるためだ。終わるのは夜10時。午前1時にデトロイト行の最終バスが出るのでそれに乗って、家に帰るのは朝の4時だ。毎晩、会社を出る前に「どうか無事に家まで帰れますように」と、祈りを捧げる。途中13kmほどは危険な道のりがある。それほど大変なのに、これまで無遅刻無欠勤で、不平も漏らしたことがないという。
「仕事に行かないなんて考えられません」 と彼は言う。
「デトロイト・フリープレス」がロバートソンさんの記事を報じて以来、何とか助けになりたいと、多くのコメントがFacebookに寄せられている。デトロイトのウェイン州立大学に通うエヴァン・リーディさんは、クラウドファンディングのサイト「GoFundMe」に口座を開いて、ロバートソンが車を買うためのお金を準備しようと決心した。
リーディさんは2月2日にハフポストUS版の取材に応じてくれた。彼は「ヒューマンズ・オブ・ニューヨーク」を運営する写真家のブランドン・スタントンさんに触発されて、この資金集めを思いついた。ブランドンさんは、ブルックリンの犯罪多発区域の学校に通う子供たちがハーバード大学へ遠足に行けるようにと、100万ドル以上の資金を集めた。
もともとリーディさんは、資金を出してくれる人なんているわけがないと思っていた、と語る。初めは5000ドル(約58万円)が目標だったそうだ。それがたった1日で、5万ドル(約590万円)近くが集まったのだ。
「これなら車一台分どころではありません」 とリーディさんは語った。「もっといろいろな使い方ができます。これだけあれば、引っ越しだってできるだろうし。シボレーの販売店からも、ホンダからも、申し出がありました。どちらも、彼に車を贈りたいというのです。だから彼はこのお金を、車以外の必要なことに使えるのです」
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。