「BABYMETAL」に「PASSPO☆」 今後のアイドルのトレンドは?

AKB48のブレイク以降、女性アイドルグループが乱立し、いまやシーンは飽和状態に陥りつつある。こうした状況下、これからデビューするグループにとって、他グループとの差別化は大きな課題だ。差別化と一言でいっても、“多国籍”“釣り”などグループコンセプトによるものや、よりファッション性を高めたグループなど様々なものがあるが、最近増えているのが、音楽面でのアプローチで人気を集めているグループだ。そこで、今回、最新の女性アイドルグループのサウンド、さらに今後のトレンドについても探っていく。

多様化する女性アイドルサウンド “職業作家”に再び脚光

AKB48のブレイク以降、女性アイドルグループが乱立し、いまやシーンは飽和状態に陥りつつある。こうした状況下、これからデビューするグループにとって、他グループとの差別化は大きな課題だ。差別化と一言でいっても、“多国籍”“釣り”などグループコンセプトによるものや、よりファッション性を高めたグループなど様々なものがあるが、最近増えているのが、音楽面でのアプローチで人気を集めているグループだ。そこで、今回、最新の女性アイドルグループのサウンド、さらに今後のトレンドについても探っていく。

■現在のトレンドは“アイドル×轟音”

女性アイドルグループの楽曲といえば、学校生活やピュアな恋心が綴られた歌詞、歌謡曲にも通じる覚えやすいメロディ、キラキラした爽やかなサウンドなど、1970年代、1980年代から脈々と受け継がれてきた“王道”のアイドルポップスを思い浮かべる人も多いだろう。あるいはモーニング娘。の“黄金期”やAKB48「恋するフォーチュンクッキー」に代表されるファンク、ソウルなどの要素を取り入れた70年代のディスコサウンドをイメージする人もいるかもしれない。

こうしたなか、ここ最近、急速に増えてきたのがロックやメタルなどのサウンドを取り入れたグループだ。その筆頭が、「アイドルとメタルの融合」を目指して活動し、海外でも熱狂的なファンを増やしているBABYMETALだろう。キュートなルックスからは想像もつかないゴリゴリの重低音とメインボーカルを務めるSU-METALの圧倒的な歌唱力には誰もが驚かされるが、メタルとアイドルポップスが起こす化学反応から生み出される斬新なサウンドは、メタルファンやロックファンをも魅了。実際の現場でも、有名メタルバンドのTシャツを着用してライブに参戦するファンや、アイドルにはつきもののサイリウムを持たず、ロックバンドのライブのように拳を突き上げ楽しむファンが目立っている。

他にも、「旅」をテーマに活動しているPASSPO☆はデビュー当時から“ガールズロックユニット”であることを掲げ、メタルやパンクの大物アーティストを迎えた楽曲を制作。最新曲「元気種☆」でウィークリーシングルランキング1位(オリコン調べ)を獲得した仮面女子も、その音楽性からロックやメタルファンからも注目を集めており、2014年は日本最大級のメタルフェス『ラウドパーク14』に出演し話題を呼んだ。愛媛のご当地アイドル・ひめキュンフルーツ缶は、本格的なロックサウンド、パワフルなライブパフォーマンスが注目を集め、ご当地アイドルながら多数の大型ロックフェスに出演。“女性アイドル×轟音”というギャップが、アイドルファン以外の音楽リスナーにも訴求し、新規ファンを増やしているのだ。

■アニソン同様、よりジャンルレスになっていく

こうした状況を踏まえて、女性アイドルグループのサウンドはどうなっていくのだろうか? アイドルの話から少し逸れるが、『魔法先生ネギま!』『涼宮ハルヒの憂鬱』等を発端とした2000年代半ばからのアニメソングブームは、それまでアニメソングにあまり積極的に関わってこなかった優秀なクリエイターを呼び込み、それが結果的にアニメソング全体のクオリティの向上につながった。また、“アニメソング”という軸さえブレなければわりと自由に音楽制作ができるということもあって、より意欲的な楽曲作りをしたいというクリエイターの実験の場にもなり、ポップスからロック、テクノ、ファンク、時には演歌まで、ジャンルが多様化。これにより、アニメファン以外からも楽曲の良さが支持されたことで、歌唱する声優やアニソン歌手のみならず、ヒットを生み出す作家自体に注目が集まるようになっていった。

こうした流れは、現在の女性アイドルグループにも言えることだ。例えば、AKB48の作品を手掛けたことをきっかけに、生田真心(「フライングゲット」「ポニーテールとシュシュ」編曲など)、板垣祐介(「ギンガムチェック」作曲・編曲など)らは様々なジャンルへと活躍の場を広げたほか、織田哲郎、後藤康二(ck510)といったベテラン・クリエイターが生み出すメロディも改めて評価を受けている。また、ブレイク前から“専属作家”的に楽曲提供をしてきたことで注目を集めるクリエイターや、シンガー・ソングライターの清 竜人のように、自分も参加した女性アイドルグループを作ってしまう事例も。才能溢れるクリエイターが集まってきているのだ。

アニメソング同様、アイドルソングにも明確な定義はなく、グループのコンセプトに合ってさえいれば、比較的冒険しやすい分野だ。今後、パンクやヒップホップ、EDMなど、よりジャンルが多様化し、これまでのグループとは一線を画す尖った音楽性を明確に打ち出したグループが増えてくると考えられる。また、優秀なクリエイターが集まってくることで、さらに作家への注目が高まっていくことだろう。もしかしたら70年代、80年代の音楽シーン同様、“職業作家”として後世まで影響を与えるカリスマも登場するかもしれない。

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