「フードスタンプ」の名称で知られるアメリカの低所得者に向けた食料費補助制度の受給対象者が、2016年には100万人減少する可能性があるとリベラル派のシンクタンクが発表した。
ワシントンD.C.の「予算・政策優先度研究センター(CBPP)」が公表したレポートによると、失業率が回復したことによって2016年からは、失業者がフードスタンプを受給できる期間を最大3カ月に定めた制限が多くの州で免除されなくなる。その代わりに、扶養家族や身体障害を持たない失業中の受給者に対して、再び制限が適用されることになる。
1964年に施行されたフードスタンプは、低所得者を対象に、食料品と交換できる金券を配る制度。しかし、1996年に行われた法改正で、失業中の受給者に対する援助は、最大3カ月までとする制限が導入された。これは、受給者が職を探して自立を目指すよう促す効果が期待されていた。しかし、2008年のリーマンショック以降、各地で失業率が上昇したことを受けて、一時この制限は多くの州で免除されていた。
現在の正式名称を「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」というフードスタンプへの登録者数は、2013年以降減少をつづけている。その主な理由は、景気が回復してきているためだ。その結果、州政府は2015年以降、健常者で子供のいない成人が3カ月を超えてフードスタンプの受給を求める場合、週20時間の就労か職業訓練への加入という条件を課さねばならなくなるだろう。
CBPPのエド・ボーレン氏は、この条件を適用することによって、フードスタンプ登録者数の減少はさらに加速するだろうと語った。なぜなら、これまでは就職して十分な賃金を得られるようになった人が受給対象外になってきた。しかし今後は、失業中でも期限が来たら受給を打ち切られてしまい、また多くの州では、受給条件に合う職業訓練や労働者再教育プログラムが提供されていないからだ。
ボーレン氏「2016年にはさらに多くの人びとが給付を失うことになるでしょう。たとえ、登録申請者数の動向が、これまで通りであっても」と述べた。
政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した。
大不況の影響が長引いたおかげで、2008年以降の過去数年間、ほとんどの州政府は支援期間の制限の免除を受けてきた。しかし、今や失業率は5.8%まで下がり、さらに低下を続けている。その結果、現在免除を受けている40州が、来年以降は免除を受けられなくなると考えられている。
共和党の国会議員たちは以前からこの免除を取り消そうと画策してきたが、失敗してきた。一方、2014年に承認された新法は、受給者に対してより緩やかな制限を課した。しかし、カンザス州、オハイオ州、オクラホマ州などのいくつかの州では、3カ月の期間制限を前倒しで課し、これらの州の登録件数は急激に減少した。
ボーレン氏はCBPPのウェブサイトで次のように書いた。「給付を失うことによって、基本的な栄養必要量を満たすためにフードスタンプに依存している失業中のアメリカ人100万人は、さらなる苦難を強いられることになるでしょう。議会が動こうとしない以上、州政府が制限の再適用に向けて動き出さねばなりません。フードスタンプ登録者や、関係する団体がこれからやってくる変化とその影響について、きちんとした理解を持つよう促さねばならないためです」。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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