格差、環境、宗教...「世界で一番深刻な問題」は、地域によってこんなに違う(調査結果)

ピュー研究所は、世界の44カ国で各国1000人以上を対象に、5つの選択肢の中から「世界で最も憂慮すべき問題」は何かを選んでもらうという調査を実施した。回答は国によって大きく異なり、全世界的な意見の一致は見られなかった。

アメリカのシンクタンク、ピュー研究所は、世界の44カ国で各国1000人以上を対象に、5つの選択肢の中から「世界で最も憂慮すべき問題」は何かを選んでもらうという調査を実施した。

2014年10月16日付で公表された調査結果によると、回答は国によって大きく異なり、全世界的な意見の一致は見られなかった。

5つの選択肢は、左上から「宗教・民族対立」(顕著に問題視しているのは、中東、アフリカ、イギリス)「社会格差」(ヨーロッパ大陸、韓国、アルゼンチン)「エイズなどの感染症」(アフリカ)「核兵器」(日本、パキスタン、ウクライナなど)「環境汚染」(中国、タイ、フィリピン、ペルーなど)。

この調査結果が全般的な傾向として示しているのは、当然のことながら、それぞれの国や地域の置かれた状況が、「世界にとっての脅威」の判断に影響を及ぼすことだ。違う言い方をすれば、他国の知らない人々について心配するよりも、自分の国で最も身近に感じる問題を選んだ人が多かった。

回答の選択肢は、「社会格差」「核兵器」「宗教・民族対立」「環境汚染」「エイズなどの感染症」の5つ。たとえばヨーロッパの回答で最も多かったのは「社会格差」だ。アメリカ人も同様に「社会格差」を最大の問題としているが(27%)、「宗教・民族対立」(24%)や「核兵器」(23%)との差はそれほど大きくない(なお、共和党支持者は「宗教・民族対立」(35%)、民主党支持者は「社会格差」(35%)を挙げている)。

一方、アフリカ諸国の回答者の多くは「エイズなどの感染症」を最大の脅威に上げており、その割合は世界の他の地域よりも明らかに高い。この傾向は、HIV感染率が世界平均を大きく上回るサハラ以南と東アフリカ諸国で顕著だった。

中東の人々は宗教・民族対立を、ヨーロッパとアメリカの人々は社会格差を憂慮している。

また、この調査は、年月の経過とともに人々の意見が変わることも明らかにした。ピュー研究所は2007年にも同様の調査を行っており、前回の結果と比較すると、意見は大きく変化していることがわかる。こうした変化は、2007年の調査のあとで発生し、それぞれの地域に直接的な影響を及ぼした大きな出来事による当然の結果といえるかもしれない。

たとえばピュー研究所は、「(ヨーロッパ大陸諸国では、前回の調査が行われた)7年前と比較して、より多くの人が『社会格差』を世界最大の問題と見なすようになった」と指摘している。「前回の調査から現在までの間には、2007年9月からの世界金融危機と、2010年のユーロ危機が生じている」。

 

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7年間の変化。スペインやイタリアなどのヨーロッパ諸国とアメリカでは社会格差への懸念が増大し、中東諸国では宗教・民族対立への不安が高まった。
 

ただし、この調査結果を読み解くにあたっては、いくつか注意すべき点がある。まず、ピュー研究所も指摘しているように、この調査は2014年4月から5月にかけて実施されており、その時点ではイスラム過激化組織「イスラム国」が、まだ現在のように台頭していなかった。もう少し調査の時期が遅ければ、「宗教・民族対立」を大きな脅威と見なす回答者の割合が増え、より多くの国でこの問題が1位になったかもしれない。

もうひとつは、回答者に示された選択肢の問題だ。この調査の5つの選択肢には、近年では重要と思われる「テロリズム」が含まれていない。今年ギャラップが行った別の調査の結果から見ても、「テロリズム」が選択肢に含まれていれば、多くの国で上位に入っていた可能性がある。

「世界にとって最大の脅威は何か」国別の集計結果。日本の回答は、「核兵器」が49%、「環境汚染」が20%、「宗教・民族対立」が16%、「経済格差」が12%、「エイズなどの感染症」が2%。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

[日本語版:水書健司/ガリレオ]

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