イギリスでは最近、2014年にイギリスで生まれた男の子の名前で一番多かったのは「ムハンマド」だった、というニュースが話題になった。しかしこれは本当だろうか?
この疑問への答えは、赤ちゃんの名前をどう数えるかによって変わってくる。報道されていたほど簡単ではないのだ。
報道のベースになったのは、子育て情報サイト「ベビーセンター(BabyCentre)」によるデータだ。同サイトは12月はじめ、2014年にイギリスで生まれた男の赤ちゃんのうち、最も人気のある名前は「ムハンマド」であり、昨年から27ランクアップし、第1位に輝いたと発表した。
ただし、ベビーセンターによるトップ100リストの数字は、同じ名前のさまざまな綴りをすべて合計したものだ。たとえば、「Muhammad」「Mohammed」「Mohammad」という名前の男の子は、すべて同じ名前としてまとめられている。
それに対して、イギリス国家統計局の統計は、別の様相を見せている。同局の統計では、愛称や綴りの違う名前は別々に扱われているが、これによれば、男の子の名前ランキングでは「オリヴァー」がトップとなっているのだ。
ベビーセンターの統計は、2014年に子どもが生まれたベビーセンターの会員5万6157人が選んだ名前をまとめたものであり、イギリス全体が対象というわけではない。これに対して、国家統計局の統計は、1年間の最終的な出生届のデータをもとに、イングランドとウェールズで生まれたすべての赤ちゃんについてまとめたものだ。同局による2013年の統計では、最も多かった名前は、男の子が「オリヴァー」、女の子が「アメリア」となっている。
一方、同局の統計では、「ムハンマド」と読む名前については、「Muhammad」が15位、「Mohammed」が23位、「Mohammad」が57位に入っている。これらを合計すると、「ムハンマド」がトップになる。「オリヴァー」と名づけられた赤ちゃんは6949人だったのに対し、「ムハンマド」と名づけられた赤ちゃんは、さまざまな綴りを足すと7445人になるのだ。
ただし、このトップ100リストでは、「オリヴァー」の愛称にあたる「オリー」も80位に入っている。「オリー」と「オリヴァー」を足すと合計7749人となり、またこちらがトップに返り咲く。
とはいえ、ベビーセンターによれば、アラブ系の名前は全般的に急増したという。男の子の名前ランキングでは、「ノア」「ジェイコブ」「ジョシュア」「イーサン」などの、聖書に由来する名前や、伝統的なユダヤ系の名前も上位に入っているものの、アラブ系の名前である「オマール」「アリ」「イブラヒム」が、いずれもトップ100に初めてランクインした。女の子の名前では、「マルヤム」が59ランクも上昇して35位になったほか、初めてトップ100入りした「ヌル」がいきなり29位となった。
イスラム教の家庭で「ムハンマド」と名づけられる赤ちゃんが多いのは、とりたてて驚くことではない。たいていのイスラム教徒は、イスラム教で最も神聖とされる預言者の名をとって、長男に「ムハンマド」か、そのバリエーションにあたる名前をつけるからだ。
失脚したエジプトのホスニ・ムバラク前大統領、暗殺されたエジプトのアンワル・サダト元大統領、パキスタンのナワズ・シャリフ首相は、一般にはミドルネームやニックネームなどの違う名前で呼ばれているものの、いずれもファーストネームは「ムハンマド」のバリエーションだ。
なお、「ムハンマド」の綴りは、地域によって異なる傾向がある。パキスタン、バングラデシュ、東南アジアでは「Muhammad」、北アフリカでは「Muhammed」、中東の大部分では「Mohammed」か「Muhammad」、イランとアフガニスタンでは「Mohammad」、トルコでは「Muhammed」か「Muhammet」が多い。ただし、かならずしもこの傾向に沿わない場合もある。
以下は、ベビーセンターによる、2014年に人気を集めた子供の名前ランキングだ。
女の子の名前トップ10
1.ソフィア
2.エミリー
3.リリー
4.オリヴィア
5.アメリア
6.イスラ
7.イザベラ
8.エイヴァ(Ava:Eveの派生語で最近人気の名前)
9.ソフィー
10.クロエ
男の名前トップ10
1.ムハンマド
2.オリヴァー
3.ジャック
4.ノア
5.ジェイコブ
6.チャーリー
7.ハリー
8.ジョシュア
9.ジェイムズ
10.イーサン
この記事はハフポストUK版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:梅田智世、合原弘子/ガリレオ]
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