赤い牛が角を突き合わせたロゴでお馴染みのオーストリア製のエナジードリンクといえば、「レッドブル」。166カ国で販売られており、2013年の販売実績は全世界で53億缶。レッドブル社は、プロペラ飛行機による「エアレース」を主催したり、2013年にはF1グランプリで総合優勝するなど、派手な活動で知られている。
このレッドブルが、大正製薬の栄養ドリンク「リポビタンD」にインスパイアされて生まれたことはご存じだろうか。1987年にレッドブル第1号を生み出した創業者のディートリッヒ・マテシッツ氏(写真)は過去に、日本のF1雑誌のインタビューで次のように答えていた。
■「なぜドリンク剤で高額納税者に?」
−−いよいよレッドブルのビジネスにつながっていきそうですね。
「勘がいいね。じつはアジアにビジネスで旅をしていたとき、レッドブルのビジネスに出会ったんだ。それで会社を辞めてこのビジネスに集中することにした」
−−具体的には?
「きっかけは、日本の高額納税者のリストを見せてもらったことなんだ。そのなかの一人にミスター・タイショウがいた。大正製薬の上原(正吉。故人。元大正製薬会長)さんだ。その人がどういう人か友人に尋ねたら、製薬会社で、ドリンク剤『リポビタンD』をつくっているということだった。電気製品とか自動車会社のトップが高額納税者ならわかるけど、日本ではなぜドリンク剤で高額納税者リストのトップになれるか疑問に思い、リサーチした。そうしたら日本にはドリンク剤の巨大市場があることを発見した。
その後、リサーチの途上で、タイ人があるドリンク剤のライセンスを持っていることがわかり、彼にコンタクトをとってビジネスが始まった。ドリンク剤は、日本以外の国でもかなりポピュラーになっていたんだ。香港、シンガポール、韓国、台湾、フィリピン、タイ……。アジアのあちこちの国で、小さな100ミリリットル程度のドリンクが人気だった。何年か前からタイにもあって、それがレッドブルのルーツになった」
−−そのときの名前は?
「クラッティンダンという会社で、クラッティンダンはタイ語でアジアの水牛という意味。ウォーターバッファローだ。そこからレッドバッファローとなり、レッドブルとなった」
(ディートリッヒ・マテシッツインタビュー「日本のドリンク剤が起業のヒントになった」/『GRAND PRIX Special』2007年10月号 P85より)