大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョナ)副社長が、機内でナッツを勧めた客室乗務員に激しく怒り、責任者を飛行機から降ろした問題の波紋が広がっている。趙副社長は担当役職から退く意向を示したが副社長にはとどまった。大韓航空は謝罪文を発表したが、「客室乗務員に責任を転嫁している」と、社員から批判の声が上がっている。
ハフィントンポスト韓国版に掲載された聯合ニュースの記事から。
趙顕娥(チョ・ヒョナ)副社長が12月9日、機内サービスとホテル事業部門を担当する役職から退く意向を明らかにした。担当は外れるが、副社長の地位にはとどまる「うわべだけの辞任」だ。
国際オリンピック委員会(IOC)の臨時総会に出席後、同日午後に帰国した趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長は、役職返上の意思を示した長女の趙顕娥・副社長の辞意を受け入れる考えを示した。
趙会長は帰国直後、仁川空港で役員会議を開き、趙副社長の退陣を決定したと大韓航空が明らかにした。趙副社長はこの席で「不本意ながら社会的に物議をかもし、お客様や国民の皆様に申し訳ない。私のせいで傷ついた方がいれば、許しを請いたい。今回の事態に責任を負い、大韓航空のすべての役職から退く」と話した。
趙副社長は担当役職を辞退しただけで、大韓航空副社長や、韓進(ハンジン)グループの系列会社の社長職にもとどまる。趙副社長は現在、王山レジャー開発、韓進観光、KALホテルネットワークの社長を務めている。
趙副社長の役職返上は、今回の騒動が海外で報道されたことによる大韓航空のイメージ失墜、趙副社長に対する市民団体の告発の動きなどが影響を与えたとみられる。韓国最大の市民団体「参与連帯」は「航空機の安全が規定やシステムによらず、財閥オーナー一家という地位によって無力化された事件」とし、乗務員を指揮・監督は機長が担うとした航空法違反、航空機の中で大声を出し、乗務員を降ろした航空保安法違反、威力業務妨害などの容疑で趙副社長を、10日にソウル西部地検に告発すると明らかにした。
■会社は「問題提起および指摘をしたのは当然」
大韓航空は12月9日、謝罪文を発表した。ハフィントンポスト韓国版に掲載された謝罪文の全文は次の通り。
1.お客様にご不便をおかけしたことをお詫びいたします。
非常事態でないにも関わらず、航空機を後退させ、乗務員を降ろしたことは行き過ぎた行動であり、これによりお客様にご不便をおかけしたことをお詫びいたします。
当時、飛行機は搭乗口から10mも移動しておらず、飛行機の安全には問題がありませんでした。
2.大韓航空の従業員は、航空機搭乗時、機内サービスと安全を点検する義務があります。
チーフパーサーを降ろした理由は、最高のサービスと安全を追求すべきチーフパーサーが、
1)担当副社長の指摘にも関わらず、規定と手続きを無視した点
2)マニュアルすらきちんと使用せず、弁明と虚偽で適当に言いつくろった点をあげ、趙副社長がチーフパーサーの資質を問題視し、機長が飛行機から降ろす措置をとったものです。
大韓航空の全従業員は、航空機搭乗時、機内サービスと安全を点検する義務があります。趙副社長は、機内サービスと機内食に責任を負う従業員として、問題提起および指摘をしたのは当然のことです。
3.徹底した教育を通じ、サービスの質を高めます。
大韓航空は、今回の件を契機とし、乗務員教育をさらに強化し、顧客サービスおよび安全レベルの向上に万全を期します。
■労組「乗務員に責任転嫁するな」
これに対し大韓航空操縦士労働組合は9日、「大韓航空はきちんと謝罪し責任を負え」と題した声明文を、掲示板にアップした。以下は抄訳。
客室乗務員への責任転嫁を取り消し、きちんと謝罪せよ!
大韓航空は社主一家の数人が思い通りにできる会社ではない。しかし現在の大韓航空経営陣はそう考えていることが明らかになった。KE086便の乗客として搭乗した趙副社長のはしたない問題について、会社側はまともに責任を負う姿勢を見せていない。
問題が大きくなり、大韓航空側は謝罪文を発表した。趙副社長の一件を始末するために熱心に働いた客室乗務員に責任を転嫁したものだ。
客室乗務員の責任を強調し、本人の役割を忘れ、全世界に大韓航空の名誉を失墜させた趙副社長の責任はどうするのか!
機長との合意があったとしても責任を免れない
安全、乗客、手荷物などの問題で航空機を引き返す権限は機長の全権だ。客室から「客室に問題があり、ゲートに戻らなければならない」と報告を受け、引き返すことを決断した機長は、法的責任はもちろん、いかなる不備もない。責任は、副社長という地位を利用して、パーサーから機長に「ゲートに戻らなければならない」と報告させた趙副社長が負うべきだ。
経営陣の真摯な謝罪と責任を負う行動を期待する
会社側の発表通りなら、趙副社長は正当な手続きによってサービスの問題を指摘し、正すことができたにもかかわらず、機内を騒がせ、航空機を停止させるやり方で業務を指示したことになり、その責任は大きい。
しかし会社は謝罪文で、副社長の重大な過失に目をつむり、責任を当該乗務員に転嫁した。このまま放置すれば大韓航空は、熱心に働く乗務員の士気や人権がわずかも考慮されず、「職員を気分のままに思い通りにできる」という反労働者的、封建的な思考の企業との批判を免れない。
客室乗務員の責任を問うよりも、経営陣の過失を潔く認め、謝罪しなければならない。
趙副社長は今回の件で、今まで大韓航空の職員が誠実に汗を流して築いたイメージを、一気に失墜させた。全組合員のプライドを傷つけ、会社のイメージを地に落とした件の責任を、趙副社長を含む全経営陣が負うべきだ。経営陣の権威主義的な認識を改め、社員を尊重する企業文化に改善していく契機としなければならない。
【UPDATE】2014/12/11 0:55
大韓航空は12月10日、趙氏が、副社長職も辞表を提出したことを明らかにした。
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