かつてないほどの強い怒りや分裂、停滞が何年も続いた後、何はともあれ、アメリカ政府がくたくたの状態から抜け出して団結するのなら、それは素晴らしいことだろう。
プライドを失ったオバマ大統領と、選挙で勢いをつけた野党共和党が、移民政策や債務問題、外交政策、教育、インフラといった、明らかに公的な問題を解決するために手を取り合うのなら、それも素晴らしいことだろう。
素晴らしいのだが、それは間違っている。
今後2年間の見込みは、実質的な成果の達成が限られたものになるだろう。そして、次の選挙で票を獲得するための主導権争いが激しくなるだろう。
次の大統領選挙に向けた「し烈な主導権争い」が中間選挙後に行われるだろう、と、ハフポストメディアグループのエディトリアルディレクター、ハワード・ファインマンは述べる。
もしアメリカが議会制民主主義の国なら、政府は11月4日の選挙結果を受けて崩壊していただろう。
しかし、ニュートンの思想の影響を受けた「権力分立の原則」があるアメリカでは、政治的な敗者と勝者は、国の運営課題に一緒に真剣に取り組まなければならない。
とはいえ、めったにそうはならないのが現実だ。
伝統にのっとり、大統領と、共和党の新たなリーダーとなるケンタッキー州選出のミッチ・マッコーネル上院議員は広い心をもって協力することを誓った。
実際には、世界貿易やエネルギー、法人税、そしてその他のいくつかの問題についての新法が成立するかもしれない。共和党とオバマ大統領は、連邦議会でビジネスに優しい議員を集めた、共和党主体の連合を結集できるかもしれない。
しかし、医療保険制度や移民政策、終わりが見えないテロとの戦い、さらに教育政策など重大で、感情的に対立しやすい問題では、世界はあまり多くを望まないほうがいいだろう。文化的な亀裂があまりに深すぎる。
オバマ大統領は今回の中間選挙で、面目を失ったとまではいかなくとも、厳しい局面に立たされたのは間違いない。その理由の一つは、アメリカ政治における潮の引き目と流れにある。大統領が所属する与党は8年の政権期間のうち、6年目にいつも議席を失うからだ。
しかし、今回は、あらゆるレベルで大打撃を食らった。
オバマの民主党 (リベラル派) はここ約10年で初めて、共和党 (保守派) に上院の支配力を譲ってしまった。共和党は、下院で既に握っていた強い支配力を強めた。彼らは、オバマの地元のイリノイ州を含め、多くの重要な州の知事選で勝利を収めた。また、彼らは、連邦議会の選挙区の境界線を引いている、より多くの州議会選挙でも勝利した。
しかし、実際には、協力のための努力が望まれる要因もいくつかある。
主な点は、アメリカ人が総じて、選挙のやり方や、ワシントンの政府がそれに対して何もしないことにうんざりしている。有権者は、選挙をする際の異常な宣伝方法よりは賢い。そして、彼らは自らが生きる、ずさんで皮肉なシステムにひどく腹を立てているのだ。
結局、アメリカ人は、テレビ広告などに40億ドル -- そうだ40億ドルだ -- も費やした選挙シーズンを乗り切ったところだ。その宣伝では、共和党はオバマを弱虫で社会主義者 (よくわからない組み合わせであるが) と呼んで叩きつぶそうとした。民主党は共和党を老婆の腕の静脈チューブを引き裂こうとしている女嫌いの略奪者だと表現するのである。
共和党はオバマの足を引っ張ろうとし、行き詰まった結果を彼になすりつけることで、支持を獲得してきた。このことは、大統領の力は世界規模に及ぶというアメリカの神話に目を向けさせ、オバマを弱く見せることにつながったのだ。
しかし、彼らは今、2016年の大統領候補が誰であれ、それに向けた下準備をして、成長した大人になったことを示そうとしている。大統領選挙に勝利するためには、怒りでは勝てず、希望の持てるアイデアで勝負しなければならないのだ。
72歳のマッコーネルは、この後すぐに共和党の上院総務になるのだが、彼には受け継がれてきた建設的な行動を必要とする理由がある。
なので、これまで述べてきたように、物事を成し遂げられると信じられる理由は存在している。
しかし、また別の側面もある。
共和党は、大統領に絶えず反対してきたので、ここ数年間自分たちがどのような位置にいたのか忘れてしまっているのだ。彼らはどうして今すぐ反対をやめることができようか。
共和党の政治活動家の中心的人物はオバマを激しく敵視していて、このリーダーは危険を承知の上でそれを無視しているのだ。
大統領自身は、政治の本質である汚い駆け引きを楽しむような政治家ではない。彼は知的な論理構成で物事を考え、ゲームそれ自体を楽しまない人なのだ。
そして現状のアメリカの政治は、不和で生まれる利益に基づいた、カネになる仕事である。選挙キャンペーンコンサルタントは何百万ドルものお金を得れば、テレビ局も何百万ドルのお金を稼ぐ。億万長者はロシアの独裁者のように平気で威張りちらしたりするし、政党は自分たちの過激な支持者たちを感情的に駆り立て、寄付金を得ているのだ。
これではまるで、下院の議席があべこべになっているかのようだ。政党はお互いの顔を見合わせる代わりに、建物の外にいる、最も愚かで忠誠心を示してくれる支持者に顔を向けているのだ。
これが変われば素晴らしいのだが、変わりそうにはないのである。
(この記事はハフポストUK版に掲載されたものを翻訳しました。)
【関連記事】
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー