文・写真 初沢亜利(写真家)
エメラルド色に輝く沖縄・辺野古の海。今年6月にはジュゴンの食み跡のある海藻が60本以上見つかった。ここを舞台に、埋め立てに反対する市民と政府側の攻防が、日々繰り広げられている。
当初、来年に予定されていた埋め立て工事が、急遽知事選前に前倒しされ、8月初めにボーリング調査に向けたフロートの設置が始まった。
10年以上辺野古漁港のテント村で座り込みをしてきた反対派市民を中心に、全島から埋め立てに異議を唱える市民が駆けつけ、沖縄防衛局、海上保安庁、沖縄県警、民間警備会社の職員との、一歩も譲らない睨み合いが続いている。
政府は工事さえ進めてしまえば、選挙での争点化を避けられると本気で考えていたのか?あるいはどれだけ反対運動が加熱しようと、誰が知事になろうと、沖縄の民意などはどうでもよい、ということなのか?
エメラルド色の海に、オレンジ色のフロートが張り巡らされている「臨時制限区域」。向こう側にキャンプ・シュワブがある。 (c)Ari Hatsuzawa
漁船に乗った反対派市民ともみあう海保。8月15日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
辺野古新基地建設(地元の人や現地メディアは「普天間基地移設」をこう表現する)に向けたボーリング調査のため、オレンジ色のフロートが張り巡らされた「臨時制限区域」。9月9日も、この中に停泊している調査台船に向けて、約50人の「カヌー隊」と「プカプカ隊」(浮きを身につけた人たち)が出発した。
海上保安庁の13隻の漁船が海上を埋め尽くしている。周辺には約40隻のゴムボートが巡回し、抗議船やカヌーを拘束する。日本政府は、日米地位協定に基づく刑事特措法で摘発することも辞さないと報じられている。
反対派市民をビデオカメラで撮影する海上保安庁職員。8月24日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
「確保」の号令とともにカヌーが拘束される。8月15日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
反対派市民とせめぎあう海保。9月9日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
ボーリング調査をしている台船付近はこの日、大潮に干潮が重なり、歩いて行ける浅瀬だった。フロートを突破し、歩いて台船にたどり着いた抗議の市民。20人以上が、海保のゴムボートにたちまち一時拘束された。「拘束の法的根拠は?」と訪ねても、「安全確保のため」としか答えない。
■キャンプ・シュワブ
辺野古漁港とキャンプ・シュワブを隔てるフェンス。海兵隊の演習が続いていた。9月9日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
キャンプ・シュワブのゲート前。当初は沖縄県警の警察官だったが、今は本土から出張してきた民間会社の警備員が市民と向き合っている。
「県民で構成される県警の警察官では、弱腰になる。県民同士が闘うという構図を避ける狙いが、沖縄防衛局にはある」と地元警察官は言う。
会場のフロート設置作業のためのタンクローリーやダンプカーの進入を阻止しようとして、県警のガードともみあう反対派市民。7月28日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
民間会社の警備員が導入されるようになった。座り込みできないよう、ギザギザの鉄板が置かれている。8月5日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
キャンプ・シュワブの現場には、ワゴンの屋台も出ている。8月5日撮影 (c)Ari Hatsuzawa
■11月1日、那覇
沖縄をなめてかかると、コトは辺野古だけでは済まなくなり、在沖の米軍基地全体に波及しかねないのではないか。
(c)Ari Hatsuzawa
11月1日、那覇セルラースタジアムにて、辺野古新基地建設に反対する翁長雄志陣営の「うまんちゅ県民一万人大会」が開催され、1万4000人を超える支持者が集結した。陣営によれば、これ程人の集まった大会は県内選挙史上初だという。
(c)Ari Hatsuzawa
県民の80%以上が辺野古埋め立てに反対していることの表れだろう。仲井真弘多知事が民意を無視し公約を破り、埋め立て承認を行ったことへの県民の怒りは凄まじいと感じる。
(c)Ari Hatsuzawa
政府は、埋め立て承認は過去のこと、と言い切り、誰が勝とうと基地建設を粛々と進める方針だが、そのような横暴が許されるのだろうか? 反対運動は振興予算を上乗せするためのバーゲニング、としか思っていない政府側と沖縄の民意の溝は深い。2014年8月に琉球新報と沖縄テレビが行った県民世論調査では、80.2%が移設作業を中止すべきと答えている。
本土マスコミのほとんどが安倍政権にすり寄っている今日、県をあげて国家権力に異議を申し立てる沖縄。保革の壁を乗り越え、国家権力に抵抗する覚悟を持ち、立ち上がった沖縄県民。そのように私には映る。「沖縄の人が本当に怒ったときは手がつけられない。1970年の『コザ暴動』のようなことが起きないとも限らない」と、移設反対派の沖縄県民は言う。
沖縄に基地の過剰負担を強いる中で平和を享受してきた我々日本人。沖縄の犠牲のもとに日本人の安全が保たれてきた、という事実を正面から受け止め、今こそ沖縄の声に真摯に耳を傾ける必要があるのではないか。
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11月16日、沖縄県知事選が投開票される。焦点は普天間飛行場の移設計画だ。
移設先の辺野古沖埋め立て申請を2013年末に承認した現職の仲井真弘多氏(自民推薦)を、移設推進派が推すのに対し、反対派は前那覇市長の翁長雄志氏に保守、革新両陣営が相乗りして支援する構図になっている。また「移設計画への県民投票実施」を主張する前衆院議員の下地幹郎氏、移設反対と埋め立て計画の承認撤回を訴える元参院議員の喜納昌吉氏も立候補した。
2013年11月から沖縄に滞在して取材・撮影を続けている東京出身の写真家、初沢亜利氏が、知事選を前に、普天間移設を巡り揺れる沖縄の「今」を報告する。
※随時掲載します。
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