松島みどり法相が辞任「うちわかと言われれば、うちわの形」【会見詳報】

松島みどり法相は10月20日、自身のイラストや名前が入ったうちわを選挙区内で配ったことが国会で追及されたことを受け、安倍首相に辞表を提出後、午後2時半から法務省で記者会見した。
法相を辞任し、記者会見する松島みどり氏=20日午後、東京・霞が関の法務省
法相を辞任し、記者会見する松島みどり氏=20日午後、東京・霞が関の法務省
時事通信社

松島みどり法相は10月20日、自身のイラストや名前が入ったうちわを選挙区内で配ったことが寄付行為にあたると国会で追及されたことを受け、安倍首相に辞表を提出後、午後2時半から法務省で記者会見した。

【冒頭発言】

本日、法務大臣の職を辞することといたしました。我が国の基本法制、法秩序の維持を司る法務大臣の立場にありながら、このところの私の言動によって国政に遅滞をもたらし、国民の皆様にご迷惑をおかけする事態を招き大変申し訳ないと考えております。安倍総理に抜擢して頂き、法務大臣という重責に就任した身として、経済再生を初めとする山積する課題に取り組んでいる安倍内閣の足を引っ張ることはできない、そう考えました。これからは一議員として安倍政権を支えたいと思っております。

今回、地元の支援者の皆様のせっかくのご期待に沿えなかったことにつきましてはまことに残念であります。在任期間は2カ月足らずでしたが、かねての持論でありました、強姦罪の法定刑が強盗罪より軽い、強姦致傷罪が強盗致傷罪より軽いことの問題を就任直後に提起したのに対し、省内が素早く動いてくれて、有識者による性犯罪の罰則に関する検討会が発足しており、今後に期待したいと思っております。ひとつだけは自分で考えてきたことを進めることが、短い間でしたができました。私からは以上です。

【質疑応答】

Q 就任1カ月半での辞任となったが、率直なご感想を。

A 私自身としては、伝統のある、重い、重要な法務省という役所の大臣になって、これまでの自分の考えからも、これをやりたい、あれをやりたい、国民に法律を近づけたい、いろんな思いを持っておりました。図らずもこういう形で退任することは残念だと考えております。

Q うちわの問題ですが、うちわについて討議資料であると表現されました。有価物ではないともおっしゃっていました。辞表提出して、その認識は変わったか。

A いえ、まったく変わっておりません。私自身、法に触れることをしたとは考えていませんが、とにかく私の問題で国政を停滞させてはならない、その思いで法務大臣を辞職することにいたしました。

Q 国会で追及された問題、配られたのはうちわですよね?

A 国会でも申し上げました。1年間に成立した主な法律について、国民というか私の地元の方々にもいろんな年代の男女の方々に知って頂きたいと一生懸命記しました。反対側には私の名前も入っています。で、確かに形の上でうちわかと言われれば、うちわの形は、持つところはありますし、していると思います。ただし財産上の有価物かと問題については、うちわというのは一般に、信用金庫や商店街の名前が書いてあって、イベントなどで配ってそのまま捨てられる、そんな類いのものだと思いますし、そういう問題になる寄付行為だとは思っていません。

Q そういう中で辞任を選んだのは、民主党からも刑事告発され、ひょっとしたら法に触れるという思いがあっての辞任なのか。

A 違います。刑事告発そのものの問題というよりは、民主党含め野党の中に、この問題など、私の問題だけではないかも知れませんが、こういう閣僚を抱えた中では国会審議ができないとか、あるいは重要法案も審議しないとか、そのような動きが出ています。もちろん法務委員会でも出ております。それがまさに国政に停滞をもたらすことであり、そういうことがあってはならないと思って、私がやったことが法に触れるとは思っておりません。、

Q 配られたもの以外に有価物ととられかねないようなものを配布したことはなかったのか。

A ありません。

Q 一部にカレンダーが配られたという話も出ているが。

A カレンダーというのは、まあ、室内用ポスターですよね。政治の世界で室内用ポスターという、外に貼って見せてはいけないけど、応援している人が自分の家や会社の中で(貼るもの)。これも1枚のペラっとしたものに私の名前や説明や写真を載せているものが中心で、財産上の価値というのは値段からみてもそういうものではないと思っています。

Q それはカレンダーとしての機能は有しているものなんですか。

A 12カ月分の日にちとかは書いています。曜日も書いてあります。

Q そうすれば有価物になってしまうのではないか。

A 財産上の有価物をどれくらいからいうのかちょっとわかりませんが、私はそういう認識は持っていないから、法律違反になると思っていないから、自分の親しい人の後援会その他の会合で配っています。

Q 松島さんの国会答弁を聞くと、今日の辞任は唐突に思えるが、いつの時点でご自身で判断したのか。それとも小渕さんの辞任と一緒になったのは理由があるのか。

A 確かに先週は続投すると、しっかりと法務大臣の仕事を務めて参ると先週の夕方も申しておりました。それから土曜、日曜、諸般の情勢をふまえて辞任の決断をするに至ったということでございます。

Q ご自身の判断なのか。回りから「小渕さんと合わせた方がいいよ」といった助言はあったのか。

A いえ、新聞でそういうこと書かれている記事も見たことあるんですけど、私自身がタイミングとして、国会が遅滞なく、国政が遅滞なく(進む)には、今のタイミングだと考えました。土日、熟考を重ねました。

Q 女性の活躍をうたった改造内閣でお二人が辞任して、今後の政権運営への影響が大きいと言われている。このことについてどう思われるか。

A たまたま私も女性ですし、小渕大臣も女性です。ただ、私の言動が問題になったというのは、私が女でも男でも関係ないことだったと思いますので、それは当たらないのではないか。そして私としてはやはり、安倍内閣にとにかくしっかり仕事してもらいたい。それに支障が出ること、足を引っ張ることは決してしちゃいけない。それがひたすら、なぜ辞めたかと聞かれれば、安倍内閣がやらなきゃいけない、全国津々浦々の経済再生、全国の中小企業も小規模事業も景気が良くなったと感じてもらえる。そんな日本をアベノミクスをつくっていく。そのためにも今、停滞しているわけにはいかない。そのように考えております。

Q 今回の辞任の判断やあいさつなど、総理や官房長官とは話をされたのか。どのような話か。

A 辞任のあいさつというのは私は常に自分の言葉で話すように考えておりますので。間違ってはいけないから一応原稿書きましたけど。

Q 小渕さんのケースに比べると額も少なく、辞任の判断はどう思われるか。立て続けということで、閣僚ドミノにつながりかねないという指摘もあるが。

A 2つめの質問については、私の辞任がドミノとかそういうことじゃなくて、私の辞任それこそは、安倍内閣が日本中に経済再生を実感してもらう、その政策に取り組んでいく。私もそう思ってこの2年半、国会議員として仕事をしてきましたが、それを実現するためであって、それがマイナスになるとはまったく考えておりません。なお、小渕大臣と何か比較をされましたが、それはそれ、小渕大臣の中身をよく存じているわけでもございませんし、私は私で別個の問題でございます。

Q うちわを発注した業者の納品書や請求書では「うちわ」と書いてある。改めて「うちわ」なのか。

A 私も見ました。納品書などは、その会社の人から見ると、商標というかブランド名も書いてあったみたいだけど、会社としてはうちわの範疇に入れているんだと思います。私が申したり私の…えー…領収書なりその他というのは、これは討議資料を印刷したものですから、それは食い違っているというのはおかしいことじゃないと思います。

Q 特捜部が受理したという話もある。受理への受け止めと、元法務大臣として捜査に協力するのか。

A 私もそれほど詳しいわけではございませんけど、告発というものはいっぱいあって、受理というのも一杯あって、その中からそれがどういうものかを捜査、点検がなされていくんだと思います。協力するのかと言われたら、もちろん必要なもの、すでに国会の委員会の方にも収支報告書ですとか、請求書とか領収書とか出してますから、同じものを出すだけで、私もこれから詳しく調べてみないと分からないような複雑な問題は抱えていませんので、それをするだけです。

Q 告発状を出されたから辞任したのか。そこを判断したタイミングと、土日はどういうご判断をされたのか。

A まず告発状の受理とは直接関係ございません。国会審議とか、国政が停滞するかが大事なポイントですから、タイミング的にはね。もう一つは総理から言われたのは、心機一転、新しい気持ちで能力を生かしてほしい、そのような表現をされました。考えたことは、この週末の金曜の夜の時点から何が変わったかというと、いろいろ考えました。でも結論は結局、この安倍内閣の国政を一日も停滞させたくない。それにはどうすればいいのか、私が続けるより辞めた方がいい。私を抜擢してくれた安倍総理を、身を引いて一議員として支える方法があるんではないか。そう思ったんです。

Q 国会では法務大臣の立場で法律を都合良く解釈しているのではないかという意見もあり、大臣としての資質を疑問視する指摘もあった。ご自身こういった指摘をどう受け止めているか。

A それはあたらないと思っております。そして、この、たとえば、告発されたらあとどうなるかという質問があったが、それに対しては法務大臣ですから個別具体的に影響を与えることを言うことができませんと答えました。現在は法務大臣ではありませんので、私の、政治家・松島みどりとして申し上げますと、法に触れることはしていないと考えていると言い切っている次第です。

Q 大臣の資質としてはどう考えるか。

A 大臣の資質、法務大臣の資質…。私は、法務大臣に的確であると安倍総理に考えて頂いて、この重責に就かせていただき、自分では資質があると考えて法務行政にあたってまいりました。

Q 性犯罪の検討会が近く始まるが、1カ月半でやり残したことや後悔する点について思うところがあれば。

A 今申し上げた件に関しては、最初の会合が10月末に始まって、あとはもとより、私がどういう中身にしろと言う考えはありませんでしたから、皆さんがたである程度の時期に結論を出してもらって、それが法律の改正につながればいいと考えていましたので、これについてはある程度満足しているわけです。それ以外につきましては、来年せっかく民法改正、債権法の120年ぶりの改正も法案の中身を詰める時期でしたから、私も一緒に議論したいと思いましたが、それがかなわないことは残念でしたが、与党の一員として法務の重要なマターに関係すること、そして入管の職員を増やさなければいけない。再犯防止のために矯正と保護が一体にならなければいけない、どうしていくかという思いはいろいろありますが、与党議員として党内部会で発言してバックアップしたい。大臣でなくとも国会議員としてできることはいっぱいあると思っています。

Q 財産的価値はないという認識だが、大臣が国会に提出した資料では、約2万枚で約174万円、1本あたり80円支払った。何を基準に判断するのか。

A それは、法律の厳密な条文の意味は分かりませんが、それがたとえば売買の対象になる、あるいは投票活動の有無、何十円のものをもらったからこの人に投票するとか、そういう選択肢を、そういうことを、こういう中身を書いている人だから投票してくれるならいいけど、うちわというあおぐものをくれたから投票するという価値判断になるようなものではないと、私はそのような解釈をしています。

Q 投票行動に影響を与えるか、そういう価値を持つか、ということか。

A それは私の考え方であって、法律について、まして告発されているようですから、判断される方の根拠はよく分かりません。

Q 司法が財産的価値があると判断することもありうる。その場合に受け入れるのか。

A それはこれからのことで、わかりません。捜査をされるとしたらどう答えるかは今分かりませんし。

Q 土日に熟考されたとのことだが、うちわが問題になってから10日以上。国会の議論もひととおり出たのではないかというタイミングとも考えられるが、今後さらに審議に影響を与えると判断したのはどうしてか。

A 各委員会、各法律の審議はこれからです。山場を超えたという意味かもしれませんけど、予算委は一般質疑、法務委も大臣所信に対する一般質疑でしたから、いよいよ各法律の議論を各委員会ともやっていくのはこれからだと思っています。

Q うちわの問題が影響を与えるのか。

A 直接うちわの問題ではございません。それだけではなくて、いろいろな総合的判断の中でございます。

Q 有価物かどうかの判断は「売買の対象」「投票の価値判断」ということでいいか。

A 今思いつくのはそういうことです。ほかにもあるのかもしれません。

Q ネット上で売買の対象になっているようだが。

A それはこのような派手な展開になったから。私見てませんけど。夏にお渡しした時点で「もうかった」という顔をしている人、高価なものをもらったという雰囲気の方はどなたもいらっしゃいませんでした。

Q 先週末に刑事告発され、自ら所管している東京地検の捜査対象に法務大臣になってしまった異例の事態だからこのタイミングで辞任するのか。

A 提出は先週ですが、受理されたのは今日になってからと聞きました。私が辞任を心で決めたのは日曜日ですから、そうじゃないです。

Q 今回の辞任が、女性の社会登用にどういう影響を与えるか。

A 私自身、安倍政権の女性を活用ということについては本当に日々感無量でおります。私が何十年も前に大学を卒業したときは、経済学の女子学生など採用してくれる会社はほとんどありませんでしたから。入社案内のパンフレットも男子のところは3m来たけど女子には1冊も来なかった。そういった中で、安倍総理が企業に向けても政府においても政治の世界でも女性を活用しようと思ってくれたこと。そしてその一環として私も法務大臣という重要な職についたこと。それは一連の流れとしてすばらしい。ただ、この女性を活用しようということは、どの会社においても、どの政府、組織においても、そのうちの一人がちょっと失敗だったというか、私自身は再生可能な失敗だと思っておりますが、何かの小さな失敗で部長になった女性が部長をいったん外れても、続く人が有能ならきちんと職に就けると思うし、そしてその女性自身も、安倍内閣が掲げるように再チャレンジで、部長で失敗した女性もいったん外されてもまた頑張ればポジション得られる、そういうものだと思います。

Q 今後の女性活用にマイナスか。

A だから思いません。もし万一、だからやめようということを考える会社があったら、絶対にそんな考えは持たないでいただきたい。

Q 松島さんといえば赤い服のイメージ。今日は公選法上、潔白だという思いで白い勝負服なのか。

A 法務大臣になってからはあまり赤い服は着ないでちょっと落ち着いた色の服をと心がけておりました。今日は、確かに、人間、特に女性が朝、何を着ようかというのは、何か自分でも思うところがありますから、白を着たというのは、よく理解して頂いた。公選法上というよりは、新しいまっさらな気持ちで今日から歩みだそう、そういう気持ちです。

Q 今日という日が小渕さんと同じ日になってしまいました。1日に2人の大臣辞職会見は前代未聞。同じ日になってしまったご感想。ひょっとしたら幕引きをはかるのは早い方がいい、1日で片付けようという思いはどこかになかったか。野党からの追及も早く終わるんではないかと。

A 月曜日ですからね。始まりの日ですし、もちろん野党の行動もマスコミ各社の報道ぶりも見ながら、きりのいいところがここだな、と。

Q あえて同じ日を選んだのか。

A 同じ日を選んだというよりは、結果的に同じ日になったかもしれないけど、別に連絡取り合ったわけでもないですし。

Q ダブル辞任をどう思うか。

A それは皆さんが判断して頂いた方が。私が言うことではないですし。

Q きのうは党の関係者と連絡は取ったか。

A まあ、官邸とか、党の先輩とか、色んな先輩型とお話はしました。でも決めたのは私です。

Q 官邸で総理にどう説明し、総理からはどう言われたのか。

A 申し上げましたのは「せっかく抜擢して法務大臣につけて頂きましたのに、いろんなことで安倍内閣の政治を停滞させかねない事態になって申し訳ありません。辞職したいと思います」と。総理からは先ほども申し上げましたが「心機一転、これからも頑張っていろんな場面で能力を発揮してくれ」と、そう言われました。

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