2014年4月14日の夜、ナイジェリア北東部にあるチボクの寄宿学校で、数百人の女子生徒たちが銃声で目を覚ました。武装した男たちが近づいてくるのを見て、生徒は兵士たちが過激派の攻撃から自分たちを救出に来たのだと思った、と生存者は語った。
実際には、270名以上の女子生徒たちはイスラム過激派グループ「ボコ・ハラム」に捕らえられた。女子生徒たちの拉致事件は世界中の怒りをかい、少女達を救出するための大々的なキャンペーンが始まった。そのひとつが、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんやミシェル・バマ大統領夫人らが参加した「#Bring Back Our Girls (私たちの少女を返して)」というハッシュタグをつけたソーシャルメディア上のキャンペーンだ。
少女たちが拉致されてから6カ月が経過した。現在までにわかっていることは次の通りだ。
生徒は1人も救出されていない
拉致から5日後、57人の少女たちがボコ・ハラムの拘束を逃れて脱出した。しかし、その後は1人も脱出できず、救出もされていない。
数カ月前、居所がわかったという報道があったにもかかわらず…
ナイジェリアの軍部関係者は5月に少女たちが囚われている場所を突き止めたと発表した。その1カ月後、アメリカの監視飛行機も人間の集団を見つけ、当局は拉致された女子生徒たちだと確信している。
オーストラリアの牧師で仲介役を務めるスティーヴン・デイビス氏が6月に報告したところによると、1カ月の間に3度にわたって少女たちの解放交渉が失敗したという。「利害関係」をもつ有力者たちが取引を妨害していることと、ナイジェリアの政治家たちがボコ・ハラムに資金調達をしているとデイビス氏は非難している。ナイジェリア政府はこの事件への関与に消極的で、救出活動のせいで少女達の命がかえって危険にさらされる可能性があると警告している。
諸外国もほとんど進展させられず
AP通信によれば、ナイジェリアが少女たちの捜索への国際的な援助を受け入れるのに2週間以上かかったという。
諸外国は援助を始めたが、大きな成果は上がらなかった。アメリカは5月下旬に80名の兵士を送り、隣国のチャドを基点として空からの捜索を行った。カナダ、フランス、イスラエル、イギリス各国もナイジェリアへ特別部隊を送った。しかしその6カ月後、アメリカ国防総省(ペンタゴン)の報道官はアメリカの捜査活動を縮小すると発表し、「未だに少女たちの居所について有力な手がかりが得られない」と述べている。
部隊は現在もチャドに駐在し、アメリカは偵察機を使って毎週のように少女たちの捜索活動を行っている。ナイジェリア軍部の劣悪な人権問題への過去の取り組みから、アメリカ当局はボコ・ハラムに関する情報を共有することに懸念を表している。
一方、女子生徒たちの出身地は今もなお危険な状態
チボクの住人は留まることを知らない過激派の攻撃の脅威にさらされている。6月には、近隣の村々に対するボコ・ハラムの襲撃が、少女たちの拉致された町から3マイル以内まで近づいた。
悲しいことに、拉致された少女たちの親のうち少なくとも11人が過激派に殺害され、あるいは病気で亡くなっている。
そしてボコ・ハラムの暴力は猛威を振るい続ける
4月以降、ボコ・ハラムはナイジェリア北東部で少なくとも5つの町を占拠したと声明で発表している。しかしナイジェリア軍はその内のいくつかを奪還したと言っている。また、ボコ・ハラムはさらに3つの少女たちの小グループと、何十名もの青少年も拉致した。その何名かは後日救出されている。
アメリカのシンクタンク「外交問題評議会」のデータによれば、4月14日以降2100人以上の人々がボコ・ハラムによって殺害されている。また、8月には10日間で約10000人がナイジェリア北東部の戦闘で立ち退きを強いられた。
圧力のもとでゆがむナイジェリア軍
ナイジェリア軍は難題に立ち向かうための体勢が整っていないようだ。8月には、少なくとも40人のナイジェリア兵が武器不足を理由にボコ・ハラムとの戦闘命令を拒んだという。また最近では、境界沿いの町々におけるボコ・ハラムの襲撃中に、少なくとも600人のナイジェリア兵がカメルーンへ逃亡したと報道されている。陸軍は、戦闘上の作戦を行使する部隊もちゃんとあると述べている。
そして深刻な人権侵害で非難を受ける
ナイジェリアの治安部隊と国軍は、長年にわたって拉致、拷問、違法殺人などの人権侵害で非難されている。近年は、政府がボコ・ハラムに対する取り締まり強化とともに、当局が「ボコ・ハラムと繋がりがある」という理由で多くの市民を拷問、殺害しているという証拠が浮上している。
ナイジェリアは国家イメージの悪化を懸念している
『ザ・ヒルズ』による6月の報道によると、ナイジェリア政府はワシントンの広告会社に120万ドルを払って、女子生徒たちの拉致事件をめぐるメディアの取り上げ方を変えさせようとした。ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン大統領にも圧力がかかっている。2015年に予定されている大統領選挙に向けて、ジョナサン大統領の再選を支援するグループがキャンペーンで「BringBackGoodluck2015 (2015年にグッドラックを返して)」というハッシュタグを使い始め、今も少女たちの帰還を目指す団体の怒りをかった。
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